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OFFICIAL INTERVIEW #4

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だから証拠っつーことでステージ上でちゃんと届いた請求書を掲げるという笑

ー…えぇっと、聞きたいことは山ほどあるんだけど…笑

カワノ まぁ…だろうね笑

ーまず、…何もかも聞かされてないんだけど、俺たち笑 何、アメリカって、ってなったよ笑

カワノ まぁ…そうだねぇ笑

ー普通さ、酒の席で「いや、実はさ…」みたいな、そういうのあるじゃん。お前…全然言わないから、全て事後報告笑 散々配信開始のタイミングの全曲レビューで死ぬほど打ち合わせしてたのに、一切そのそぶりなし笑 しかも連絡しても返事返ってこないし笑 いや、忙しいのはわかるんだけど…。

カワノ いや、ほんと、すんませんね…。でも、本当にね…急に決まったからさ…。

ー逆に誰にどこまで話してるのか、って話でさ笑

カワノ うんとね…身内…いわゆる舞台周りのスタッフ達には、実際にシカゴまで連れて行くのもあって話は全部通してて、あとはCD流通を任せている上島さん(PCI music)かな。「FCKE」のリリース業務の流れで上島さんがニュースサイトに触れ込んでくれたみたいで、そこらの人たちはみんな知ってるんじゃないかな。いくつか取り上げてくれたところはあったし。あとは「FCKE」リリースの時にメディアの取材を二つ受けたんだけど、そこでは発表前に知らせたかなぁ。みんなびっくりしてたけど。あと…友達とかには…ほぼ言ってないんじゃないかな。タクマ(SuU)と、しんのすけ(時速36kmボーカル)と、先輩だと健太郎さん(analogfishベースボーカル)と亮介さん(a flood of circleボーカル)、ギース(経堂浜焼き太郎店長)、…あぁ、あとヒデアキ(時速36kmドラム)かな、あいつ、俺んち泊まりに来て、その流れで話した気がする。うん…それぐらいじゃないかなぁ、知ってたの。

ーじゃあ本当に限定的な人だけが知ってる感じだったってことなんだ。

カワノ 他のメンバーは周りの仲の良い子達に話はしてたかもしれないけどね。厳格に隠すようなことでもないしさ。…まぁ、報告遅くなって怒られた方はたくさんいましたけどね笑 「なんで俺には言わないんだ!」みたいな笑 だってしょうがねぇじゃん、キリないし、忙しかったし、って笑

ーここ数ヶ月のお前の多忙ぶりを見るとそれはそうなんだけどさ笑

カワノ まぁ…悪かったよ笑 いや、本当にね、心から。

ー笑 しかもアルビニって…俺たちの青春じゃねぇか!

カワノ ねぇ、ほんとに。nirvanaとpixiesはもちろん、俺の世代ど真ん中的にはcloud nothingsとcribsだし、PJハーヴェイもそうか…たまらんすよ。

 

ー…まぁ、それだけ聞かされると「カワノ、また意味不明なことをやろうと企んでるな」ってなるんだけど笑 マジで実現まで持っていくとはね…。

カワノ 俺も現実味は正直ねぇよ笑 だから証拠っつーことでステージ上でちゃんと届いた請求書を掲げるという笑 まぁその時の写真見せてもらったら情けない感じだったんですがね笑

ーともかく聞きたいことは山盛りだよ…。

カワノ まぁ、いつもお付き合いいただいてますから、今日もよろしくお願いしますね。

俺は人に深く何かを及ぼすものをやりたい、「人間」をやりたい

ー…とりあえず、ワンマンから振り返るけど…言い忘れてたけど、本当にお疲れ様だったね。あのライブが見られてとても嬉しい気持ちと、想像もできないくらい過酷な三ヶ月だったと思うと、本当にお疲れ様、って気持ちだよ。

カワノ 良いライブだったでしょ笑 …お疲れ、っていうなら今お前が食ってるオムライス自腹で払えよ!

ーそれとこれとは話が別笑

 

カワノ 冗談だよ笑 たらふく食べて飲んでください笑

ーでも、音源が素晴らしかったのはもちろんだけど、ライブも本当に…心から本心で、感動したよ。ワンマンライブでさ、あんなの…あれ見せられたら、涙出ちゃって。

カワノ いやぁ、嬉しいっすね…。

ーここで言葉にするのも難しいし、手放しに「良いライブ」って言っちゃうのもなんか憚られるというか…。ライブでお前が言ってたけどさ、「ライブハウスを出ても耳に残るように歌う」っていう…。まさにその通りになったし、したな、っていうか。なんか、いろんな曲をやったし、お前の口から出てくる言葉も一個一個重かったし、ものすごく長いライブの中に何十個もハイライトがあって、日を追うごとに思い返すシーンがそれぞれ違ってくるような…難しいけど、そんなライブだったよ。…良い、っていうか、物凄い、とんでもないライブだった。今でも余韻が残ってるよ。

カワノ …何曲だったっけ…28曲(正確には29曲)やったのかな? それだけの曲数をやるにはやったけど…それが一連の流れで、とか、セットリスト全体を捉えて一個のものに完成するってよりは…一曲一曲に意味があるライブに…狙わなかったけど、意図せずして結果的にそうなったな、っていうのは俺も感じたライブだったよ。本来は俺、ライブをトータルで捉えて表現したい、って人だから、そういう組み立てはやんないんだけどさ。でもそれに反して、フロアを見てて、ああ、そういう日だな、っていうのは思った。もちろん、いい意味でね。

ー…あとはこれ、普通のお客さんとは違う着眼点かもしれないけどさ…俺、お前が大変だったの見てたから、アンコール1回目の途中から、「これ、まだ曲やりそうだな…本当に死ぬまで歌うのかな…」ってなって…もうこれ、冗談抜きでステージ上で死ぬんじゃねぇかな、って、そんなわけないんだけど、なんか涙出てきちゃったんだよね笑

カワノ なんだそりゃ笑

ーいや、本当にズタボロだったじゃん、お前笑 四六時中動き回って、寝てるのか、飯食ってるのかも怪しいし、そういう奴が一生懸命やってて、それでもう、なんか、来ちゃってね笑

カワノ …そしたらそこからさらに一時間半も拘束されるという地獄を見たわけだ笑

ー拘束って言うなよ笑 長いライブ!とは思ったけど笑

カワノ うふふ笑 まぁ、そういうのもあるだろうけどさ…そういうのはどうでもよくて、ちゃんとライブで、冗談じゃなく四人とも瀕死になるまで歌えたのが俺は良かったと思ってるけどね。…人の生き死にに対峙した歌を歌ってきてるわけだから、俺は。だったら、それに説得力と実感がないといけないわけで…1番原始的でシンプルな方法だよな、歌ってるやつが半死半生になるまでステージで出し尽くす姿を見せる、っていうのが。これができたことが、俺の中では1番デカかった。

ーうんうん。で、そういうお前の、安い言い方だけど、命懸けのライブをみてるお客さん…何よりよかったのがさ、その、フロアのお客さんがものすごい良い表情をしてて、それにグッと来ちゃったな、俺。笑いあり、涙あり、三者三様、それぞれ抱いてる感情は違うんだろうけどさ、みんなそれぞれいい顔だった。

カワノ あぁ、それねぇ、スタッフみんなそう言ってくれた。「とんでもなく良いフロアを作ったな!」って。俺も1番嬉しかったね、それ。公演のタイトルに偽りなし、だし、俺が1番大事にして来たものだから、それは。しかも、自分で言うのもなんだけど、本当にね…この日揃えたスタッフ陣、信じられないぐらい歴戦のスタッフ達だからね笑 その人達にそう言わしめたって言うのは、お客さん達も誇りに思ってほしい。

ーもちろん、ライブ自体も完全ソールドで…あれだけの人数を集めた、っていうのがものすごいことではあるんだけど、そこが別に重大でもトピックでもないライブだったっていうか。それを上回る一人一人の強烈な感情がクアトロ中渦巻いてたし、その渦巻き方もさ、わかりやすく熱狂するとか、簡単な一体感に溢れるとか、わざとらしく暴れたり荒れるとか、そういうのじゃなかった。全てが音楽を理由に起こる出来事だったし、もっと複雑で…お前らのステージみたいに、何もかもが起こるようなフロアだったんだよね。フロアにも何十個もそれぞれのハイライトがあるような、そんなライブっていうか。

カワノ うんうん。

ーこの、たった一回のライブに、本当にみんな、全国隅々から集ったと思うんだけど、それを裏切らないし、それだけの価値のあるライブだったし…。

カワノ まぁ、それはお互い様だよ。来てくれた人たちは時間も金も労力もそれぞれ使って、もしかしたらよりシリアスな日々もこの日のために乗り越えてここまで辿り着いてくれて…。そういう人たちみんなから俺もすごくいい表情やハートを一人一人から受け取って、すごくこう…嬉しかったし、…感謝してる。メンバーもスタッフも、いいものを見せてもらえたから。…だし、俺個人としては…なんというかねぇ…ようやく俺ら、音楽で何かを成せた、って、俺はそういう感覚がこのバンドで初めて、ってくらいだった…そういうライブだったよ。

ーほう。

カワノ …変な話さ、俺たちの出発点は…すごくアンチミュージック、アンチテクニック、アンチショーマンシップ的な部分が大きかったから。そもそもメンバーは俺以外バンドを組むのが初めての人間で、レイはアメリカから帰ってきたばっかりの心身ともに削れまくったズルズルの時代で、リズム隊に関しては結成当時は初心者に毛が生えたレベルだったし、とうの俺はギター握って2年ぐらいとかだったし笑 そんなバンドな上に、客やハコの人間、お偉いさんや音楽産業そのものに向かって悪態ついたり、ステージ上で楽器を壊したり体に大怪我してみたり、歌や演奏を放棄してメチャクチャをやったり…。テクニックやセンスのなさとか、めちゃくちゃに拗らせたハードコアマインドとかを、変な部分に悪く暴走してた、っていうか。…今のは格好いい言い方したけど、平たく言えば真っ向勝負を避けて、変なことをやって物事を台無しにすることで爪痕を残そうとしてた笑

ーあぁ、なるほど。「ライブにきたやつを後悔させてやろうと思ってた」って、前も言ってたもんね。

カワノ あの当時を悔やんでるとかは全くないんだけどね、あれはあれでやり方だったし。…まぁ、いまだにやっぱ、そういうイメージは根深いから、そっちの文脈で語られることは多いけどね笑 仕方ないっちゃ仕方ないけど。だし、それはそれで突き通せばかっこよかったっちゃかっこよかったのかもしれないけど…そうはしなかった。経ていく中でそれは本来、俺のやりたいことではないっていうことをしっかり認めて、じゃあその上で本来俺が実現したい表現とは…って、ずっと悩んだりしてたんだけどさ。バンドの音楽のことだけではなくて、お客さん…フロアに駆けつけた一人一人に対して、一体俺は何ができるんだ、って、そういう葛藤や苦悩が1番デカかったけど。

ーうんうん。…まぁ、わかりやすく変化して行ってたもんな、君たちは。その渦中での如何ともし難い苛立ちもわかりやすく透けて見える瞬間がステージ上でも何度もあったし。

カワノ だいぶね…振り回したよね、人々を笑

ーまぁ、今に始まった事ではないから笑

カワノ 笑

ー…まぁ、友達もスタッフもお客さんも、少なくとも今も残ってる人たちは、カワノはそういう奴だ、ってそこも織り込み済みでみんな見てるだろうから…。

カワノ ありがたい話っすよ笑 …まぁ、そういう風に悩みながら時間を過ごして、自分なりにライブってものに対して向き合ってきたけど…この日のワンマンでね、ようやく音楽で純粋に素晴らしい演奏ができたんじゃねぇかな、って、自分で誇りに思えたというか。

ーうん。

カワノ そりゃ今も、すげぇ演奏がうまいわけではないし、俺たちのライブは…あまりライブを運ぶ流れとか、セットリストとか、そういうのをあえて決めずに即興性を重んじてやるような感じだから、ハマらないと、ひどい時は大惨事もあるし、それが原因で大喧嘩したり怒鳴り合いになったりもするけど笑 でも、あの日の四人の集中力とか、没頭具合とか、その上で完成した当日の演奏とそれに呼応するフロアの感じとか…振り返ったら奇跡みたいな三時間だったんだよね。メンバーは今まででいちばんの演奏をしてくれたと思うし、俺はそれに応えて今までで1番叫んだし。だからこそああいうフロアの光景が生まれたと思うし、ライブの後に一人一人の心に深く残せたものがあっただろうし。そういうものがお互いに相互作用しあって作れた三時間だった。

ー…いい話だなぁ…。

カワノ ふふ笑 …もっと言えばね、音楽、って脈で話をしてきたけど…それも超えた部分…「人間」っていう部分を色濃く出せたんじゃないかな、って思ってるんだ。

ー「人間」か。

カワノ そう。…俺最近思うんだけど、俺のやってることは音楽は音楽だけど、もう…変な話、これからは「音楽」って時代じゃねぇ!って思ってるの。さっきの完全に矛盾してる風だけど笑 でも本当にそう思ってて。「音楽」の時代じゃなくて、これからはそこも通り越して「人間」の時代だ、って思ってる。

ーなるほど…。もっと詳しく言うと?

カワノ そうねぇ…。みんなが日々言い争ってるような、…例えば、ロックが死んだ!とか、音楽のパターンは出尽くした!とか、ポップシーンは終わってる!とか、そういう次元の話じゃなくって、さ。理論的に高度なものを作ろうとか、その反対の大衆に馴染むものを作ろう、とか、そう言う話でもなく。…そもそも、そう言う話が出るのもさ、音楽って人間が聴く、人間のツール…手段…娯楽…なんでもいいけどさ、人のためのものだからで、だからこそ世に溢れてるいろんなものと並列に扱われがち、というか。

ー本でもいいし、映画でもいいし、ドラマとか、お笑いとか、野球とか…それも含めて?

カワノ そう。で、俺も同様にそのツールを使って生き延びてる以上は、別にそれに異存は全くないんだけど…でも、俺の人生上、俺に何かを及ぼしたあらゆるものって、そのカテゴリーを飛び越えて俺に何かを及ぼしてくるものだった、って思っててさ。その、飛び越えて踏み越えてきたものって…変な言い方だけど、ただ「音楽」じゃなかった。…めちゃくちゃ「人間」だったのよ。俺たちが人間のためのツールだと思って楽しんでいたものの中から、すごい勢いで飛び出してきたドンがったものに感動して、それは「人間」そのものだった、って思ってて。喜怒哀楽も、成功も失敗も、歴史も時間も、些細な感覚も…って、そういう「人間」らしいものが表現として強く現れてるもの。…俺はそう言うものに感動してきたし、いろんなことを学んだり気付かされた…。…まぁ、これはあらゆる正解、とは思ってないけど、少なくとも俺にとっては大いなる正解って話ね。

ーなるほど。

カワノ だからこそ…多少漠然とした安っぽい言い方をしても構わないなら、俺は人に深く何かを及ぼすものをやりたい…その…「人間」をやりたい、って。これは、ずっと思って悩んでやってきて…で、ようやく、ワンマンの日、少しでもこれに近づけた気はしてる。悩み狂って怨霊と化していた俺の亡霊が成仏しましたよ。…まぁ、半殺しになるまで歌ったから物理的に成仏させられたけどね笑

ー笑 だろうよ、あのテンションで三時間駆け抜けて笑

カワノ …まぁ、そう言うライブだったかな、俺から感じた・見えたもの、って意味で語るなら。でも、これはもうみんなにも言ってるけど、この日、果たしてどんな1日だったか、って言うのは俺の口じゃなくって、やってきた一人一人の心の中にあるものだとおもってる。人それぞれに委ねた部分で、それぞれの正解・不正解があればいい、し、あって良い、あるべき、って。

ーうんうん。

カワノ さっきの話じゃないけど、いろんな部分にハイライトを見出せるようなライブだったように、人それぞれにそれぞれ違った感覚、感想、感情があると思うから。…強いて言うなら、それのどれもが正解、ってことさねぇ。

ーそっか。…で、次回のワンマンは?

カワノ えぇ、もうその話するの?

ーいやぁ、あれ見せられたら、もう次が見たい!って人もいると思うけど…。

カワノ 逆だよ! あれだけのことやったんだから休ましてほしいの!笑

ー笑

カワノ …まぁ、それは冗談として、さ。逆に…あれだけのものを、って言ってもらえるのは嬉しいけど、じゃあ次やるならあれよりももっとすごいもの…俺がここ数年悩んで導いて出した解答を、より深めたものは見せたいのね。ライブの内容もそうだし、会場をどこにするのか、とか、お客さんとは次回のワンマンまでにこれまでもこれからも築き上げる絆みたいなもんをどうやってよりコアにしていくのか、とか、何もかも含めて、ね…。だから…もっとこれから新しい試行錯誤や葛藤が待ってるし、曲は作らんといかんし、練習はしなくてはいけない…そう簡単に、ハイ!次!とはできないかなぁ。うん…半端にはやれないから、俺らのワンマンっていうのは。機が熟したら、その日はまた全員集まろうぜ、っていう。今年はもうやる気はないし、ワンマンツアーはやりたくないと思ってるから、また単発で、大きなところで...いつになるかわからんけどね。

ーそっか。

カワノ …まぁ、あとリアルな話、三時間もやらせてくれるハコ、普通はないから笑

ーはっはっはっ!笑 そもそもね笑

カワノ あの日は好意で特例だっただけで、普通はできない! 怒られるから! まぁ、俺ら、そんなに大会場でのライブって積極的にやる感じでもないし…そもそもライブ制作の会社がいまだについてないから、大きい会場はそもそもああいう奴らがおさえちゃってるから、自力じゃあなかなか滅多に抑えられないんだけどね…。そもそもはい、やります、と、簡単にはやれないの。…まぁ、シビアな話、フツーに現実的に厳しい、ちゅう話ですわ笑

ーネタに事欠かないバンドだなぁ笑 いつまでもアマチュアみたいな感じだし笑

カワノ まぁ、ネタにしてこうやって話せるだけ美味しいですって笑

ーでもどうすんのよ。俺はまたやってほしいけど…。

カワノ そこはもう…どうにかしますよ笑 これまでもいろんなこと、自力でどうにかしてきたんだから。まぁ…次はもっとすごいものを期待しててくれると、って思うな。きてくれた人も、来れなかった人も、まだ出会ってない人たちもね。…まぁ、ひとまずは俺たちはまた小さなライブハウスに戻って、来たる日にまたみんなで会えるように、きてもらえるように、次は全国各地、俺たちの方から会いに行くことをしようかな、って思ってるかな。

初めから勝算しかなかったかも、俺の中では

ー自力で、っていうと、アメリカ行きも自力なの? まぁ、自力は自力なんだろうけど、発案企画実行まで全部お前プレゼンツ?

カワノ うん。マジで何もコネクションないし、共通の知り合いがいたり、代理人がいるわけじゃない。俺が「FCKE」の2曲とGoogle翻訳で作った英文をメールでぶん投げて返事がきて、って、それだけ。

ーすごい話だなそれも。まずなんでその発想に至るのかも謎だし笑 海外レコーディングとか興味あるタイプでもなさそうだったけどね。

カワノ なかったなかった。別に、熱狂的海外志向、洋楽至上主義!ってタイプでもないし。なんなら俺の曲は日本人に響いてこそだ!ぐらい思ってるからね。今はDIYの力が強くなってるのもあるし、もっとシンプルに海外で曲がめちゃくちゃ聴かれました!みたいなことも起こりうるし、夢のある時代ではあるけどさ、そこまで贅沢は望まないし、あくまでドメスティックなバンドであろうとは思ってるんだけどね。

ーそもそも普通は「アルビニにレコーディングしてもらいてぇな…よし、連絡しよう!オッケーだったらアメリカ行こう!」とかならねぇから笑

カワノ まぁその辺は色々あったねぇ。…今年の年始はそもそもやけくその極みだったんだけど…色々あってバンドはマネージャーと別れることにして、で、蓋を開けてみたらこれまで俺たちの感知しない部分でおざなりな部分がたくさんあったり、不正や良くないことになってることがあったりするのがそれなりに発覚して、大急ぎで都内のあちこちをかけずり回ってたんだけど…もう…へろっへろになっててね、それで。

ーほう。

カワノ …で、見かねた「音楽と人」の編集長の金光さんが声かけてくれて、お互いの用事終わりに二人で飲みに行ったんだよね。で、きったない狭い店で「お前これからどうするんだ?」「自分でやります」「それは絶対無理だから!」「いや、やりますって!ほっといてくださいよ!」みたいな押し問答をやり、結局ダラダラ飲んでたんだけどさ。

ーうんうん。

カワノ そしたら、酔っ払ってきた金光さんが突然、「そこまで言うならお前は海外に行くしかない、現代のBECK(漫画の方)になるんだ!」みたいなこと言い出して…。

ー…お前の周りぶっ飛んだおっさん多いよね。

カワノ まぁ、それに「なってやるよ馬鹿野郎」って言ったんだけど…。

ー笑

カワノ でもこれね、金光さんがぶっ飛んでるわけじゃなくて、実は数年前から言われてたんだよ。「YOUR SONG」出したタイミングくらいかなぁ…。「俺はCRYAMY海外合うと思うんだよねぇ〜、一千万もかからないから頑張って金貯めてやれよ!」みたいなことは言われてたんだよ。

ーへぇ。その時期から。曲のテイストも変わってきた頃だな。

カワノ うん。まぁ俺は「こちとらそれどころじゃないわ!やるわけないでしょう!」みたいに笑ってたんだけど笑 だから、その話が数年越しにリバイバルした、って感じなんだよね。元からあの人はすすめてくれてた。

ーそうだったんだ。

カワノ で、二件目に行く途中で「俺マジでやるから」って言って、しこたま飲んで別れて帰ったんだけど、翌日すぐ金光さんからメール来て…「これ、現地の有名なエンジニアの連絡先のリスト。○○はアメリカのここに住んでて、ギャラは○○ドル、で、ここまで飛ぶには航空券が何十万で…」みたいなこと書かれたメールが届いてね笑

ー笑

カワノ で、俺は俺で「マジかよ…」って、それで一回ヒヨっちゃうという笑 でも、やるって言っちゃったし、これで尻尾捲ったら情けねぇし…やるしかねぇ!って思って。で、「やるならスティーブ・アルビニだ」っていうことで…スティーブへの連絡…まぁ、スティーブは金光さんは連絡先知らんとのことだったから、結局ホームページのコンタクトからの連絡にしたんだけど、その日の晩に酒飲んで、恐怖心をかき消したその勢いで「Dear Steve…」と…。

ー送ったんだ!

カワノ まぁ、英文なんて綺麗に書けないからGoogle翻訳使って文章を仕上げて、最初のメールだけ英語が得意な友達に一応見てもらったんだけどね。でも、本当にすぐ送ったよ。

ーこう聞くとほぼ勢いだな…。

カワノ うん、ぶっちゃけダメ元だったし。っていうのも…聞いた話によると、そもそもスティーブがレコーディングをやる、って場合は…彼の審査…スティーブがやってくれるのかどうか、ジャッジが入るっぽくてさ。ダメだと断られたり、そうじゃなくてもスティーブのアシスタントに回されたり、って結構あるっぽくて。

ーそうなんだ!

カワノ それでもスティーブのスタジオで録音!ってだけで売り文句にはなるし、アシスタントの人も流石の腕だから、やるやつらは結構、それでもやるらしいんだけどね。…でも俺はスティーブに断られたらやるつもりはなかったから、メールにも「「FCKE」の二曲を聴いて何か感じるものがあったらレコードを作ってくれ。何も感じなかったら別にいい、無視してくれ。スティーブとしかやる気はない。」って書いて送った。

ーなるほど。

カワノ で、送ったのが夜中の2時とかで、多分現地時間だと昼間になるのかな。で、俺はその日寝て、昼前に起きたんだけど…もう返事来てたんだよ。

ーへぇ!

カワノ 俺も「うわっ!アメリカ人ってメールの返信早いのマジなんだ!」って笑 で、ドキドキしながらメール開いたら、丁寧に色々書いてたけど…「曲聴いた、気に入った」って。

ーすげぇな笑

カワノ で、最後に「俺と一緒にグレートなレコードを作ろう。シカゴで待ってる。」って書かれてて、俺は「決まったな…」と。「それにしてもアメリカ人は返事までかっこいいな」と…笑 で、すぐにメール上でやりとりして、あっちのスタジオのスタッフのテイラーってやつを紹介してもらって、製作費と予算の話し合いを始めて、その日の晩にメンバーにラインで「アメリカ行きたい?」と…。

ーえっ、ちょっと待って。メンバーに何も言ってなかったの?

カワノ 言ってないよ。ここまでワンセットで勢いなんだから。

ーとんでもないことしてるな…。えっ、それはメンバー、大丈夫だったの?

カワノ まぁ、三者三様あるけど…やると決まったらやらないといけないんで…俺たちは…。

ーなんというか…めちゃくちゃだな笑

カワノ いいんだよ! みんな結局、最終的には喜んでたから! ウキウキでパスポート取りに行ったがな!

ーははぁ…でもそういう流れで決まったんだな…。

カワノ まぁ…そうだね。ぬるっと…ぬるっと決まりましたね。こう…映画的なアツい展開はなく…。本当に、日本でやるのと同じ。エンジニアに連絡して、スケジュールと場所押さえて、録音の計画を立てるだけ。仰々しい手続は一切なかったよ。スティーブがインディースピリットの人、っていう部分もすごくでかいとは思うんだけどさ。

ー…お前もイラついてると思うし、野暮だから、って思ってたけどさ…多分気になってる人も多いと思うけど…お金は?

カワノ あぁ…お金…。野次馬みたいにゴチャゴチャ聞いてきたり、やいやい言ってくるやつ多いけど….。関係ない奴らは黙っといてほしいっつーか…ほっといてくれりゃあ良いんだけどね。あんまりしたくない話なんだけど、って…。

ーでも聞かれたくないならここでバスっと言っとかんと。ストレスになってるだろ、その辺り。

カワノ まぁ、今日日、後ろ盾もいないこういうバンドがさ、海外で録音するなんて突飛な動きを突如やろう、ってなったら、そうなるのはしゃあないことだけどさ。…でもこの短期間でいろんな人からすげぇ言われたんだよ、金の話笑 「クラウドファンディングやれ」とか、「これぐらい出資するからうち(レーベル)で出しませんか?」とか…。…どうでも良いけど、自主レーベルでやってる若者が…って、馬鹿にされてる感じだよな。人のことなめんなよ、って。なんも知らん奴らが…。

ー怒らないの笑

カワノ クソだよ、あいつらは。全部断ったから良いんだけどさ笑 だし、そういう下世話な話を躊躇なく平気で聞いてきたり人前で話題にするなよ!ってのは思うな…。もう本当に…悪いけど、気持ち悪いし、俺は単純にそういうの、しんどいし…。

ー…とはいえ、レコーディング費用、安くはないだろ、絶対。むしろ高いだろ。

カワノ まぁ、そうねぇ…。でも、思ったより破格の値段でやってもらえることにはなったから。とはいえ…恐ろしいんだけど…今冷静に当時のことを振り返ると…一切そのへん勘定してなかったね笑 そこも勢い。スタッフに給料払って、グッズと音源作って、俺たちが生活する分には問題なかったけど…全然足りてなかったんじゃない?笑

ーはっはっはっ笑

カワノ …アメリカ行きの全てが決まったのが一月の第二週ぐらいだから…恐ろしいね…。うん…恐ろしいよ…笑

ーお前…「勝算がないとこんなことはやらない」とかこの間ほざいてたじゃん!(※先日CRYAMYメンバーがインスタグラムライブで行った会見でのカワノの発言。クラウドファンディングや集金を勧めてくる外野の声に一喝して「そういうのは絶対にやらない」「勝算がない状態でこんな計画は立てない」と、募金やクラウドファンディングはやるつもりはなく、やることもないことをあらためて宣言していた。)

カワノ まぁ…こう聞くとほぼ博打でその場の勢いで決めちゃった風に聞こえるかもしれないけど、俺はちゃんと頭で計算して、その後のライブとか、CDの売り上げを考えて、絶対に結果的にやれる算段は見えてたから。現実的なことをちゃんと天秤にかけた上で…だから。別に、完全に無策の無鉄砲で行ったわけじゃないよ、もちろん! うん…だし…そういう俺の意味不明なムーブは今に始まったことじゃないから…。別に…昔からこうだから、俺たちは。

ーいやいや…。また恐ろしいことを…。仮に何かが起こって、ダメになるって可能性もゼロじゃないんだから…。

カワノ …でも、仮にもし失敗、ってなるならそれも運命って思ったと思うよ、俺は。招いた帰結がそうであるなら完璧に俺たちの実力不足だし、バンドとお客さんたちと積み上げてきたと信じていたものがなかったってことだし、新しい出会いも獲得できなかったってことだし。もっと言えば、「FCKE」が一切評価もされないし、ただヘンテコなもんだ、って見なされて終わるんなら俺はその程度だ、って自分に失望するだけだしね。…結果、蓋を開けてみれば、まずアルビニは「良いバンドだ」って頷いて俺たちとのレコーディングに乗ったし、同様に、クアトロには800人近い人間が集まって、フロアには最前から奥までその一人一人が俺たちとしっかり目が合ったり、ステージから飛び込めば物理的に全員と触れ合えるわけで。「FCKE」も、この2曲を演奏した時のお客さんの顔を見れば本当に重要な曲になってくれた実感はあったし、実際のCDの売上枚数とか、その後の反響は目に見えて大きかったし。…それに、「それは結果論で、うまく行ったから良かったけど〜」って言われるかもしれないけど、俺は2023年が始まって、アメリカのレコーディングもそうだけど、そこに至るまでの全てのもの…シングルのリリースと、レコ発ライブと、何よりもワンマン…自信しかなかった。…また矛盾するけど、うん…初めから勝算しかなかったかも、俺の中では。

ーそれだけのものは作ったし、ライブで見せられるだけの力も蓄えた、ってことだな。去年はずっと苦しんでいたけど…その悩みとか葛藤がよりお前を強くしたと思うし、だからこそ「FCKE」は生まれて、それが説得力を持ってみんなに受け入れられたと思うし。

カワノ だといいね。…まぁ、ダメだったらなんでもやりゃ良いんだよ、できるだけの手段を使って。俺がまた20歳の頃みたいにバイト生活に戻るでもいいし、なんなら内臓売ればいいし笑

ーまぁた極端なことを笑

カワノ それに、仮にアルビニがGOを出さなかったとしたら、曲だって何個もあるんだから、レコーディングして「じゃあこれどう?じゃあこれ…」って送りまくってね笑 …うん、まぁ、どうにでもなるし、どうにかするし、どう足掻いても実現させるし…根拠はないけど実現するだろうな、って思ってた。…大体ね、俺が強く強烈に念じたことって、大体叶うんだよ、マジで笑 そういう意味じゃ奇跡の男ですから。

ーそっか。

カワノ …まぁ、実際は決まって…めちゃくちゃホッとしてるけどね笑 ホッとしつつ、ひと息つく暇もなく忙殺されてますが…。今月休みねぇんだよな…。毎日何かある…。

ー笑 でも偉いじゃん、ちゃんと動き回って。

カワノ 小心者ですからね、根は笑 なんかやってないと不安なのよ。…いやぁ本当に…2023年に入って起こったすべてのことが、何が欠けても、何が起こらなくても実現しなかったミラクルだな、と思ってますよ。

ーそっか。この発表をしたことでの反響とか、そういうのは?

カワノ う〜ん、反響は、あるにはあるけど…「すげぇ!」とか、「ヤベェ!」とかじゃなくて…これ、本当に情けない話なんだけど、「カワノ、お前、大丈夫か?死ぬのか?」が多いね笑 バンドマンの奴らも、先輩も。

ーはっはっはっ!笑

カワノ どんだけ俺信頼ねぇんだよ!って笑

ーいや、多分そっちじゃなくて、気が狂ったと思われてるんだよ笑

カワノ まぁ、それもある! 言い出しっぺの金光さんにも一応ね、「焚き付けてもらったお陰様で、ばっちり決まったから!」って報告したら狼狽えて口パクパクしてるし、人伝に聞いたけどいろんなやつに「あいつ、マジ…?」みたいな感じで言ってたらしいからね笑 引いてるじゃん、自分で若者を焚きつけといて、って笑 頭きたからガチやぞ、ってステージ上で請求書を掲げたんだけど、それでなんか言ってくるかな、と思ったら「三時間のライブは老体にはしんどい」って、ライブ終わったら楽屋にも寄らず帰りやがった笑

ーことごとくうまく行ってないじゃん笑

カワノ でもそうは言っても、みんな喜んでくれてるよ、周りの奴らは。嬉しいことだよね。一昔前は海外でレコーディング、っていうのも珍しいことではなかったけど、今はもう、滅多にないからね…。自分達の周りの人間が、ってなると尚更ない。だから、そういう奴がついに出てきて、嬉しい!っていうのはみんな言ってくれるな。…あっちで何かに巻き込まれないか心配もしてるだろうけどさ笑

ーそっかそっか。…対照的だけど、お客さんはフロアで見てた感じウワッ!ってなってたけど、なんか、アルビニとかアメリカでレコーディング、っていうのに沸いてる感じじゃなかったね。純粋にアルバムだ!って感動。それはなんか、お前らの客、って感じですげぇ愛らしかったな笑

カワノ それはそうだね! …まぁただ音楽を聴く側からすりゃ、俺らが誰とやろうが関係ないっちゃないもんね。ただみんな純粋な気持ちで、良い曲聴きたい、ライブ行きたい、だと思うから。

ーそうそう。本当に純粋にセカンドフルアルバム出るんだ!嬉しい! みたいな。なんならその後の「渡米前にリキッドやりますよ〜」の時が1番声デカかったし笑

カワノ いやぁ…良い奴らだな笑

1番はライブかな!あっちでライブやりたい!

ーアメリカでの滞在中はどういう生活になるの?

カワノ だいたい二週間ぐらいいることになるんだけどね。色々調べて、滞在費とかを鑑みるとエアビーエヌビーで一軒家借りるのが良いみたいでね。ホテルが高かったり、治安の問題とかもあったり、それを考えると、って。で、そこを拠点にレコーディングスタジオとそこをひたすら往復かな。みっちり缶詰になってひたすら録音、録音!と。

ーストイックだな笑

カワノ まぁ観光に行くわけじゃないしね笑 作業も長時間に及ぶだろうし。飯もスーパーでどかっと買い込んで、家に帰ってからみんなに俺が作ろうと思ってるよ。

ー短期間とはいえ、本当にあっちで生活することになるんだもんなぁ。通訳とか、そういうのは大丈夫なの?

カワノ 最初は誰かを雇って連れていくつもりで考えてたんだけど、色々考えてそこも節約。海外まで仕事に出る、ってなると人一人雇うだけで何十万かかる、って世界だから、どうしてもね…。それなら、自分で回せるならそれが1番良いな、ってなってね。そもそも面識ない人と二週間も一緒にいるのも辛いし、作業中なんてそれこそ絶対に俺たち、殺伐とするから、そんな雰囲気の中で「じゃあ通訳、お願いします!」なんてかわいそうだしさ。

ーあぁ、そうだなぁ。

カワノ 意外にもたかしこが英語がわかるんだよね。あいつ、あんまり人に言いたがらないけど、帰国子女で。「いけるだろ」って言ったら「ハイ」って笑

ー笑

カワノ パッションでいけ!つって笑 だから現地でのやりとりは…不本意ながら彼におんぶに抱っこだね笑 で、まぁ、幸い俺とレイはどっちも海外経験があるし、どっちもアメリカにも滞在した経験もあるから、基本的な勝手はわかってるからさ。現地での生活はあまり問題なく過ごせそうかな。…あとは夜道で歩かない、とかね笑 でも、1番はライブかな! あっちでライブやりたい!って、いつものノリで笑 若い頃やってたみたいに、「ライブハウスの皆さん、オファーお待ちしてます!」のノリ。

ー良いなぁ。

カワノ でも現実は中々厳しいよ…。あっちのみんなと交渉はしてる最中だけど、中々あっちでライブするのはハードルが高い。土着の文化やしがらみっていうのもあるにはあるだろうけど、そもそも根本的に日本とは当たり前だけどライブハウスとか、ライブをする環境とか条件みたいな、そういうのも全く違うしね。例えば下北沢のライブハウスみたいに、メールで音源送って、ブッキングしてもらって、ノルマ払って出演、とか、そういう感じではない。

ーあぁ、そりゃそうか、そうだよなぁ。

カワノ レコーディング作業中の現地での連携もあるから、シカゴの人たちとも何人かコンタクトを取ってるんだけど、いきなり日本からやってきた四人組に「ライブやらしてくれ!」って言われてホイホイやれる、って具合でもないみたいなんだよな。アメリカのイメージって自由な感じだし、その中でもシカゴって音楽が盛んな街、って聞いてたから、俺らもいけるだろ、って正直甘く見てた。ここは見切り発車だったね、すっとライブさせてくれるもんだと思ってたんだけど笑

ーそれもあってあのツイートか。

カワノ うん。Twitterで協力は募ったけど、もちろん、流石にシカゴにいる人ってのはそうそう見つからないけどね笑 でも、もし「知り合いがバンド探してるよ!」とか、そういう些細なきっかけでも良いからあれば良いな、って。別に大袈裟なことやろう、てんじゃないから、気楽に連絡してほしいかな。あっちでうまい飯屋でも紹介するんで、食べましょう!ぐらいのノリさね笑 あとは…これは時間に余裕があれば、だけど、もともと友達で、日本で知り合ったやつなんだけど、現地に住んでるラッパーと、久々に会えるし音源作れたらいいね!みたいな話もしてる。俺がトラック作って、そいつの家で制作して歌ってもらって、みたいな。リリースするかはわからないけど、ほぼ遊びでね。

ー面白い!

カワノ うん。だから、そういうコラボレーションじゃないけどさ、音楽の仕事で一緒になんかやれたらいいな、って希望もありつつ…。バイタリティだけは死ぬほどあるから、あとは俺が頑張って、もうちょっとなんとかなれば良いな、ってさ笑 こう…ドラマが…。メイクドラマしようや!って笑

ーいやぁ、色々上手く行くといいな。中々大変だとは思うけど…。

カワノ そうだね。…まぁ、何かやろうにも時間はないからさ。レコーディングで忙しくてそれどころじゃねぇ!ってなる可能性もなきにしもあらずなんだけどさ笑 でも可能な限り動き回るつもりだよ。

ーTwitterで見たけど、レイくんはあっちにしばらく滞在するの?

カワノ うん。レコーディング後に二週間ぐらい。飛び込みで演奏ができるパブとかでセッションして修行するらしいよ笑

ーもともとアメリカにいたんだっけ?

カワノ そうそう。随分前だけど、ニューヨークに住んでた。それもギター修行のために行ってたんだけどね。だから、本人的にはリベンジだね。今はギター講師しながらあっちの生活資金の足しにしたりしてるよ。

ーなんというか…たくましいなぁ、君たちは笑

カワノ たくましくないとやっていけないっすよ! まぁ、まだ渡米までは時間もあるから、それまでにいい出会いとか縁があれば良いな、って思ってるかな。先のことも楽しみにはしてるけど、浮き足立って浮かれてる場合でもないから。ひとまずは目先のことをやっつけていかないと。

どんなものを作っても、それを実現実行するだけの気合と研鑽は怠らないことが、変な話、俺が自由に振る舞うことの責任とか、義務だ、って思ってるかな

ーでも、色々とトピックが多すぎて却ってぼやけてしまった感じはあるけど、ついにセカンドフルアルバムがリリースだもんな。めでたいよ。

カワノ そうだねぇ。ようやく見えてきたね…。長かった気がするよ。

ー曲はできてるの? 去年のお前は水面下で制作三昧だった印象があるけど。

カワノ そうそう。まさに。変な話、去年から曲ができまくって困ってるのよ。今、何十曲もあるデモからアメリカに持っていく曲を厳選してるところ。そろそろ送らないと、みんな練習できないから急がないとなんだけどさ。

ー楽しみだねぇ。フルのアルバムサイズが出る、ってなると、レッドアルバム以来か。

カワノ …なんか、反省みたいになっちゃって変な感じに思われるかもしれないけど、今振り返ってファーストアルバムの曲目を見るとさ…。フルアルバム、って名前は冠してるし、アルバムを通した明確なテーマがあるんだけど、良くも悪くも「あの当時の良い曲を寄せ集めたベスト盤」って構成になってしまってるんだよね。

ーあぁ、なんとなく言わんとしてることはわかるよ。大枠としては「オルタナ/パンク」っていうロックのジャンルで統一感はあるけど…もうちょっと、言語的だったり、魂的な部分の表現で、ってことだよね。

カワノ うん。それはあのアルバムのテーマが…なんだろう、個人のドキュメントの集合だから、そりゃあ人生のある時間時間を切り取って並べたらベスト盤っぽくなるのは当然なんだけどさ。中々フルアルバム的な、曲ごとのリンク、っていう面では薄いかな、って。バラバラのピースをつなげて一個の風景を書いてるイメージ。もうちょっとわかりやすくいうと、明確な一個のテーマはあるんだけど、曲たちがそこに向かっていったことで完成したわけじゃなくて、一個一個曲をならべた結果的にそのテーマが完成した、っていう。まぁ、ファーストアルバムってそういう無計画な感じが良さでもあるんだけどね。

ーセカンドは違うんだ。

カワノ うん。曲たちがもっと密接につながったり補い合ったり激しく流動的で、構成ももちろんだけど、曲調や音の鳴り方もファーストとは根本的に別物になっていくね。もっと自分の生々しいところをあえて使った上で、…なんというか、….それを持ってもっと外界に強烈に訴えるような詞が曲を引っ張って先行していくような感じだし。音楽的には…言い方は難しいけれど、強烈にアクが強いものと、歌とメロディに振り切ってるものが極端に混ざり合って混在した仕上がりにはなるんじゃないかな。…まぁ、変な話、言語化に困る音楽=オルタナ、ってことで笑 それは曲ごとにもそうだし、一曲の中での展開でもそうだし。

ーう〜ん、そこにエンジニアにアルビニが加わるってなると、より賛否両論なものが出来上がりそうだな笑

カワノ そうだね。音響のことは話し出すとキリがないんだけど…音は今まで以上に生々しくなって、すごく乾いて重いサウンドになるだろうね。これまでの、ギターが轟々と鳴ってて、歪んでいて、デシベルが大きい…っていう、そういうわかりやすい派手さとか、見せかけの煌びやかさからは離れていく。ただただ重たくて、けど今まで以上に、無加工で録り晒しの、変な話もっと素朴な仕上がり、っていうか。俺のオーダーもそういうオーダーをしたし。この作品も、どういう風に受け止められるのか、それはわからないんだけど…まぁ、それはそれで、俺たちが聴いてきたUSオルタナのサウンドで絶対格好良いしな笑

ーパッサパサのな笑

カワノ うん。それでいいし、もっと言えばこれまでリリースしてきたもので否定の声がない作品なんて一つもないから。何か出すたびに結果的に誰かを切り捨てたし、誰かを得てきたし。だから、これからも大丈夫、って思うし、俺にできることはその都度その都度のベストを嘘偽りなく作り上げることしかないわけだからさ。

ーそっか。…まぁ、そうは言ったけど、俺はめちゃくちゃ楽しみだな。一種、生まれ変わる、ってことだしな、CRYAMYが。友達としても、リスナーとしても、どうなっちゃうのか不安もあるけど、楽しみ。

カワノ そうだね。…それに、どんなものを作っても俺は誰かにとっての大事な何かを作れる自信があるんだよね。…この間さ、渋谷のクラブとかいっぱいあるあたりで友達を待ってたら、向こうから歩いてきた、イカついヒップホップファッションのやつに「あの!」って話しかけられてさ。「この間ワンマンライブ密かに行きました!」って。

ーうんうん。

カワノ 年齢も服装も趣味も、いろんな奴らがいるんだけど、俺に話しかけてくるやつあんまりいないから、珍しいな、と思ってさ。それで、「おお!ありがとう!」って、流れでちょっと立ち話になったんだよ。そしたらそいつが、「ぶっちゃけ「#4」以降の音源は、自分の置かれてる状況とか、精神的なこととかでどうしても昔ほどずっしり受け入れられなかったんですけど、久々にライブ見てその認識変わりました!」って、すげぇ正直に言ってくれてさ。

ーへぇ!

カワノ 「実際にライブで聴いて、どの歌も「俺の歌だ!俺のこと歌ってる!」って思ったっす!」って。嬉しかったね。…まぁ、あいつ、こんな女々しいインタビューなんか逐一チェックしてるとは思えないんだけどさ笑 でも、本当、彼の言ってくれたことだけはずっとそうなれ!って思って歌ってることだからさ。誰かの何かになる、っていう。どんなに腐ってもそこだけはわずかでも信じてきた。で、そう言う気持ちって、それが俺たちが目の前ですごく良いライブをすれば、絶対に伝えられることだ、ってことも、無責任に思ってるわけじゃなくて、心から確信を持って思ってることで。

ーそれはまさにそうだね。…だし、そういうのはお前、ずっと人を舐めずに、ちゃんと一人一人に向きあって、っていうのは、やってきたことだから。実を結んだ、ってことなんだろうね。

カワノ うん、そうだと嬉しいな。…まぁ、そういうわけでさ、…昔からそうだけど、これからはこれまで以上に好き放題やらしてもらうよ、っていう。…うん…それもあるけど…もっといえば…なんか、どんなものを作っても、それを実現実行するだけの気合と研鑽は怠らないことが、変な話、俺が自由に振る舞うことの責任とか、義務だ、って思ってるかな。ストイックに、そこは、ちゃんとやる、っていう。

俺にはこいつらのために頑張るという使命があるんだ!

ー…で、渡米前の最後の自主企画はリキッドルームで、って感じか。

カワノ そうだね。これも急遽抑えたから、まだまだ練っていかなきゃいけないんだけどさ。クアトロ抑えるのも結構大変だし、リキッドルームもハコのスケジュールって年中ぎっしり埋まってるぐらい人気の会場なんだけど、突然、7/10だけピンポイントで空いてさ。これ逃したら押さえられない!あっちにいく前に盛大にやるか!って、本当に急遽抑えさせてもらったんだよね。マジで、3月に入ってからやることが決まったから、急造も急造で良いとこだよね笑 イベントビジュアルも出来上がってないし、物販に何を用意するのか、とかもまだまだ話し合ってる最中。でも、まぁ、来れる人たちには楽しんで欲しいっすよ。

ーイベントタイトルも「脱皮」か…。ここ一年ぐらい、ずっとお前らって過渡期のイメージがあってさ。変化と進化の境目でずっと蠢いてるみたいな、得体の知れない迫力。それがクアトロのワンマンでついに爆発した、ものすごいライブをした、って印象だったんだよね。それを経てついに一歩踏み出していよいよ完全に生まれ変わる、と…。

カワノ うん。いよいよビッグイベントも迫ってきたからね。バンド史に残るような…図らずもそういう出来事を目前として、じゃあそのタイミングで何ができるか、何をやるか、…そして、俺らは何を思い、感じてるか、それを見せつける、ってコンセプトかな、この日のライブは。そう言う日になると思うよ。

ー…フロアでお前らのライブを見てるとさ、俺もそうだし、お客さんもそうだと思うんだけどさ、お前らのライブ…なんか見るたび緊張させられるんだよね笑 一体何がおこるんだ!っていう期待感以上に、どうなっちゃうんだろう…って緊張笑

カワノ ふふ笑 まぁ、大いに緊張しておいていただけると良いんじゃないですかね。

ー恵比寿という街は似合わないけどね笑

カワノ まぁね笑 …個人的には、この日にまた特別な一夜を作れたら良いな、って思って準備してるよ。…っていうのもさ、変な話だけど、やっぱ、今の状況…アメリカに行く、っていうのもそうだけど、自分らでバンドを運営してることとか、目に見えないところでメンバーもスタッフもみんなが力一杯体力を振り絞って動き回ってることとか、思っている以上に応援してもらえてるんだよね、みんなに。大変な状況だから!ってのももちろんあるんだろうけど…でも、そういうみんなの気持ちで随分支えて貰えてて、頑張れてるっつーか。

ーうんうん。

カワノ 去年一昨年とかさ、どうしても世の中が暗かったり、戦争とか、SNSでの誹謗中傷とか、政治や宗教の問題とか、いろんな社会問題にもなってるような出来事だったり、そういう部分にすごく自分のフォーカスが当たってて、気落ちしたり、そこに対する怒りとか悲しみとか、鬱屈とするばっかりだったんだけど…そういう、どん底じみた気分や境遇の中で…本来は逆であるべきなんだけど、最終的に俺の方がみんなから随分助けてもらったな、って気持ちがあってさ。別に、いろんな問題が全部、根本的に解決するようなことではないのかもしれないけど、人間のパワー…思いの強さみたいな、自分の信じてきたものでちゃんと自分が救われた実感があったわけよ。

ー先月募集して公開した全曲レビューとか、すごかったもんな。俺たちもまとめるのを手伝ったけど、年齢も職業も違う一人一人強い思いで楽曲のことを書き記してくれた。俺も感動したもん。こんなに強い思いを受け止めたのは初めてだった。

カワノ そうだね。で、俺はステージでそれを音楽で返そう!曲を作って帰そう!とか、もちろん思うわけだけど、最終的にはフロアから跳ね返ってくるエネルギーとか、楽曲を聴いた人からもらう反響で、またしても俺が助けられる、っていう、そういう循環も目の当たりにしてさ。さっきの話じゃないけど、すごく良いフロアが今の俺たちにはしっかり強くついてるんだ、っていう、そういう頼もしさとか、喜びをもらったというか。もちろん、遠方でライブに足を運べない人たちも然りね。直接顔は見れずとも、よく手紙をもらったり、レビューみたいなメッセージをもらったり、すごく多いんだけど、そう言う気持ちに対して…俺にはこいつらのために頑張るという使命があるんだ!みたいな、そういう笑

ーわかるよ。

カワノ そういう気持ちが俺にはあり…まぁ、要は何が言いたいか、っていうと…CRYAMYね…自分で言うのもなんだが、色々とドえらいことにはなっちまったけど…もしかしたら、この日は渡米前ラストだから、っていうのもあってさ、見にきた人が「CRYAMY頑張ってこいよ!」とか、「応援してるぜ!」的な、そういう空気のライブ、ってみんな思うかもしれないんだけど、むしろ…逆にね、俺たちの方から、すごいもの見せて、「良いもん作って帰って来るから待ってろよ!またな!」みたいな…そういう日にしなくちゃ、っていうのは強く思ってるかな。

ーなるほどね。

カワノ 俺、これまで音楽を再会の約束のツールだと思ったことは全くなくてさ。CDでもライブでも、曲を聴いて、「またよろしく!」とか、「またライブ来てね!」っていう、そういうのじゃない、って思うつーかね。むしろ、そこまでのことを他人に望むのは贅沢だとすら思ってるの。そういう考えを否定するわけではないし、むしろそういう思考は素晴らしいとすら思う瞬間があるけど、俺はできないし…やれないな、って。今でもそうだけど、俺の中での第一義は…その1日に味わった感情だったり、たどり着いた日までに蓄積した痛みや苦しみだったり、そういうものをその瞬間でどうにかする、その人に及ぼす、何かを果たす、っていう、そういうものが俺のやるべきこと、って思ってるというか。示し合わせたり、約束をしたり、そういう不確定な部分に希望を残したり、先のことを見据えたムーブをやってる余裕なくって、そうじゃなく、今、まさに目前に希望も失望も余すことなく出し切ること…これが1番大事だし、俺の使命だ、と。

ーうんうん。

カワノ でも、…なんていうんだろうね、今、それとはまた違って…すごく未来を見据えてるんだよ、俺。それは遠い未来ではなくて…いずれリリースされるセカンドアルバムに向けた、っていう、本当にすぐやってくるような未来なんだけどさ…。今、そこに目掛けて大きなものや感情が渦巻いて、俺たちも進んでいってるけど…絶対にそこでみんなと再会したい、って思ってる。

ーまさにさっきの「再会の約束」だな。

カワノ そうだね。それをこれまでやってこなかった俺が上手にやれるのかはわからないけどさ笑 …まぁ、器用にいかないならそれなりに、やってみようか、って。ワンマンの後も書いたけどさ、「また全員集合しよう!」って。うん…それもまた約束ではあるし…そういう日を…目前で何もかもが起こるような1日を、君と一緒にまた絶対にまた迎えよう、無事に明日を迎えてそこで会おう、っていう、そういう誓いを立てる日になれば良いな、って。

ー…あの壮絶なワンマンも良かったけど、それとはまた毛色の違った良いライブになりそうだね…!

カワノ 勿論! 勿論だし…未来の話をしたけどさ…毎日しんどい思いをして過ごしてて、いつまで俺の体と気力が保つのか、とか、音楽にいつまで力を裂けるのか、どこまで通用する才覚があるのか、とか、ぶっちゃけ俺にもわからないから。いつ死んでもおかしくないわけ。だから、これから俺たちが起こすあらゆること…その何もかも、いつ終わっても悔いののこらないような、そういう時間にして、その時間をみんなに使えれば、俺は音楽をやる一人間として冥利に尽きるからさ。残された時間、俺は一個一個、食い潰しながらそれをどうやって使うか、って、そればっかり考えてるよ。…そういう日々の先に再会はあると思ってるから、その約束をこの日、果たしましょうや、って、そういう感じ! …まぁ、色々なことがこれから起こる気がするけど…期待して待ってて欲しいな。

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