OFFICIAL INTERVIEW #1

俺の唯一の人だよ、あんた
ーでは…乾杯。
カワノ 乾杯。ってアイスコーヒーっすけどね。元気してた?最後に会ったのいつだろうね。
ーワンマンツアーのすぐ後じゃないかな?みんなで店でDVD見た日。その前から電話はちょこちょこしたりしてたけどね。ライブは見に行ってるから久々って感じないけど笑
カワノ 本当に何も言わんでチケットかって来てるもんね。シェルターとかで見かけると「うわっ、おる!」ってなってちょっと嫌な気持ちになるんですよ笑
ー何でだよ!笑 売り上げに貢献してやってんだから、チケット運のよさを誉めてほしいわ。…ってか、急に連絡してきたと思ったら本当に初回俺とお前の雑談かよ!俺バンドマンでも歌手でもないのに、見てる人、誰だよって感じだろ。
カワノ いや、いきなり本格的に人呼ぶのも怖いじゃん。グダる恐れもあるし、人様に見せる以上はちゃんとしなきゃでしょ?倉田さんと俺の雑談なら滑ってもお蔵入りにしてさ、反省いかして第一回に臨めるじゃん。あぁ、あとさ、倉田さん、恥ずかしいけど、真面目に俺の話聞いて、かつズケズケ物言ってくれるでしょ?俺の唯一の人だよ、あんた。
ー嬉しいけど、プレッシャーすげぇし、正直やりたくねぇよ!お前らみたいな面倒くさいバンドの、神経質で短気なボーカルと話すとかさ。
カワノ とか言いながら昔は俺のことよくぶん殴ってたじゃん笑 しかも今日も律儀に聞くことメモってきてるし笑 久々に見たよ、大学ノート。行ってもねぇくせにさ。ウケるわ。
ーうるさいなぁ、お前、そういうとこだよ、やたら最後にトゲのあること言う。だから犬しか友達がいない時期あったんだよ。
カワノ 違うわ、あの時は飼い主の代わりに散歩してやってたんだよ。ってか、もういいよ、こういう話!書き起こすの後々ダルいんだからさ。
カワノはたしかに外側の大きな世界との戦いには負けたかもだけど
ー…この夏たくさんライブしてたね。
カワノ いきなり普通の話になったね笑
-うるさいな!俺だって気をつかってるんだよ笑 俺個人の話なんだけどさ、去年のツアーファイナルを見てからお前のこと気になっちゃって、リキッドルームとキネマクラブでそれぞれワンマン見て、俺、今更ながらお前らにハマっちゃってさ。七月、八月はワンマンでもないのに二回くらい見に行ったんだよね。どっちもいいライブだったよ。
カワノ いや、そういうのすげぇ嬉しいんだけど、マジでさ、来てるなら声かけるなりLINEしてくるなりしてよ笑 うわっ、てなるじゃん。
ーいやいや、知り合いだからって馴れ馴れしくするようなことしたくないじゃん。それに、お前らのライブ見たあとはお腹一杯になっちゃって、ゆっくり話すなんてことできないのよ。
カワノ まぁ、普通に嬉しいっすけどね。でも来てくれた七月のシェルターと八月のロフトの日のライブは、七月、八月を通してもこの夏イチ、って言えるぐらい抜群に気合いも魂も乗った渾身のライブできた気がしてるから、認識が同じで嬉しいよ。
ーでもお前個人としては、電話してたときもそうだけど、すげぇ精神的に落ち込んでた時期だったんじゃないの?ライブにもその感じ、少しだけ出てたしさ。
カワノ あー、落ち込むって言うか、ひたすら考えた時期だったかも。身の回りで人がなくなったり、先輩のバンドが解散したりもあったし、外の世の中としても狂った時代になってきたな、って言うのが肌で感じ取れるレベルになってきて、それが自分の人生というか、生活とリンクしちゃって、すごく意識してしまって。それで、ちょっと疲れちゃってたのもあるかもしんないっす。だから距離をとれるところはとって、でも気になっちゃうから一人で悶々とする、っていうのに…あえて身をおいてたかも。
ーずっと落ち込んでたもんな、俺からしたら、はっきり言ってお前には直接関係のないことなのに、って思ってたんだけど。
カワノ いや、逆。逆っつーか、逆にならざるを得なかった…世の中で起こった出来事を、自分のこととして受け止めざるを得なかった。身の回りでも、大きなものに翻弄されてしまって、簡単になにもかもなくなったりとか、傷つく人がいたりとか、そういうのをダイレクトに目の当たりにすると、連動してニュースでしか知れないような遠いところで起こってることもリアルに感じちゃって。…うまく言語にできないんだけど、俺の人生に密接に食い込んできた一年になったと思う、今年は。
ーなんかさ、そういうのをどうにかライブの場で表そうともがいてたのかな、っても感じたんだけど、それはそう?間違ってない?
カワノ うーん、間違ってないけど、徹底的にそうはできなかったかな。俺の曲って、大きな世界を描いてることってなくってさ。ほとんどが俺の心の中の風景で完結してる。…まぁそれも大きな世界ではあるんだけどね。だから、音楽って領域で勝負しよう、戦おう、そういうのと、って思考でやろうとしたけど、結局俺如きの音楽にこれまでその大きな世界を投影してこれてなかったから、言葉にはしたけど肝心の音楽が及ばなくって負けちゃった感じはある。言葉にはしたし、心の中で葛藤したこと、その上で俺がみんなにできること、っていうのを表明はしたし、けど…お客さんも俺も、結局それだけじゃその日をやり過ごせただけで、根本的な解決には至らなかった。…まぁ、音楽...俺ごときの音楽で解決しようっていう考えが傲慢だって言われたらそれまでだけど、できるって信じたいじゃん。だから、俺、まだ曲作んなくちゃ、って思った。
ー慰める訳じゃないけど俺はどのライブも感動したよ。このインタビュー読んでる人にも伝わったらいいけど、カワノはたしかに外側の大きな世界との戦いにはこの夏、負けたかもだけど、同じ世界や時代を生きている人たちを守ろうとする戦いにはまだ負けてないのがわかるライブをやってるし。「君のために生きる」(WASTAR/「#4」収録)とか、「あなたが生きててほしい」(世界/「#3」収録)とか、むしろ俺は、傷をつけてくる世界から誰かを守る役割を果たせていたと思うよ、お前らの音楽で。
カワノ だといいな。でも、俺のこれからの戦いはそういう大きな世界にも打ち勝つような言葉を吐き出して音にする、って言うことだと、この夏を越えて感じたんですよね。結局、そこを片付けてやらないと、誰も幸せにならないし、俺も疲弊していくし。
ーお前、自分の疲弊とか考えないやつかと思ってた。
カワノ いや、しんどいっすよ。しんどいし、俺いつも言ってるけど、命懸けとか、やだし。強いて言うなら捨て身であれ!とは思ってるけどね。でも捨て身って命を拾うためにする行為だとも思うしさ。だから体でも心でも、痛みを伴ってもいいけど、最後に壊れてしまうのは違うと思ってる。
俺のバイブルは「無罪モラトリアム」
ー音楽の話とかもしていいわけ?
カワノ いいよ!ってかこのインタビュー自体、今後も流れ作んないで雑談したのまとめるだけでもいけそうな気がしてきたし、今。話の流れっつーか、聞くことのリスト作ってんの、倉田さんだけっていうね笑 だから必死になんないでね、気楽に、いつも飯一緒にくってるときみたいな感じでさ。
ーやなやつ笑 …カワノって飲むとよく音楽の話するけどさ、外向けにそういう話をやってないイメージあるから、…まぁ俺らは死ぬほどやったけどさ笑 改めてしようかなって。
カワノ そうかもね。日記を昔書いてた頃は音楽の話したりもしてたけど、インタビューとかでもそういうのないし、しても乗ってないし笑
ーオッケー!笑 じゃあ改めて。昔の話になるけどさ、お前が東京でバンドやる!ってなったのは風の噂で聞いてたんだよ、昔。
カワノ 俺と倉田さんの絶縁時代ね笑
ー話脱線するからいいよそれは笑 で、どんなことやってるんだろーって聴いてみたら、「ちょっとふるくせぇ!」ってさ笑
カワノ まぁ…笑 でもブルースとかパンク、ハードロックとか、古典的な音楽か?って言うとそうでもないと思うんだけど。
ーいや、その古さじゃなくて、なんか、2000年代の臭いだよ、感覚としてあったのは。例えば…初期バンプとかシロップとか、あの辺りのギターロック。あと、海外で言ったら宅録系のガレージロックじゃないやつ…リバイバル以降のガレージロック…うまく言えないけど、そんなの。
カワノ よく言われる。
ーでもメロディはすごい歌謡曲的じゃん。言葉を選ばなければ、ロックじゃない感じがすごくある。
カワノ でも、まぁ、メロディはそうかもね。元々両親の音楽の趣味の影響が俺はものすごいんだけど、母親が昭和のポップスとかフォークが好きな人だったからさ。吉田拓郎とか長渕剛とかユーミンとか。そのせいだろうなぁ。あと、俺は、実はロックサウンドを作るのがそんなに得意ではない笑
ー笑
カワノ でも、バンド、っていう形態で言うと、俺の中には実はロールモデル、あるんだよね。これまでいろんなものを聴いて、影響受けて、それを明かしてるつもりだけど、最近考えて、自分でも気づかなかった本当に影響されたものって、...バンド音楽で言うと、実は椎名林檎の「無罪モラトリアム」かもしれない。...これもまた純然たるバンドではないが笑
ーへー、意外。「無罪モラトリアム」かぁ。
カワノ ドオルタナのサウンドに歌謡曲のメロディ…まぁ俺「歌謡曲のメロディ」ってよくわかってないけど、単純に情緒のあるいいメロディを乗っけるっていう。年代近いところで言うと初期coccoとかもそう。すごい聴いてた。あれはよりグランジ寄りだけど。あーいう方法論を開拓して広めたのって、俺は椎名林檎のファーストだと思ってる。だから俺のバイブルは「無罪モラトリアム」なのかもって思った。
ーバンド、ってくくりではないかもだけど、すごいふに落ちたし、実際体現してると思う。
カワノ いいメロディに攻めてる生々しい音、っていうね。…まぁむっちゃ格好つけてるけど、実際のところはそこまで考えてなかったかも。最初にCRYAMY組む!ってときはシンプルに「nirvanaとか「パブロハニー」の頃のレディオヘッドみたいなシンプルなバンドにしよっ」って感じだったけどね笑 シンプルなロック!って感じ。でも、スタートこそそういう洋楽志向だったけど、そこに俺が若い頃に流行ってて好きだったバンプとか銀杏とか、クリープハイプ、毛皮のマリーズ...って、どちらかというと洋楽じゃなかったね。ドメスティックなバンドを参考にしつつ...で、今はよくわからなくなってるという笑
ーそうだね笑 混然としてる。
カワノ 上京してからもいろんなバンドをライブハウスで見たし、そこからも影響されていき...ってね。ネバヤンとかGEZANはよく見に行ってたな。
ーかなり雑食だったんだ。
カワノ そうそう。特定のものあげるとなるとすごく難しいぐらいいろんなものに触れて、好きになってるから、わかんないかも。ジャズもラップも聴くし、インストもノイズも聴くし、エレクトロとかボーカロイドも聴くしさ。うん、俺多分、スゴイチョロいからさ、悪くなきゃなんでも聴けるんだよ笑 最近そうでもないけど、昔は友達の音楽とか、無条件に全部好きになっちゃってたし。...今はダセェな〜って思ったりするけど笑 それも結構適当。
ーまぁ音楽ってそういうもんだよな笑 よければよし!って。
カワノ うん。そこに人間的魅力とか、深い感動をもたらしてくれる+αがあるものが特に好きかな。逆にプレイしている人間のことが受け付けなかったりとか、作者のやってることが許せなかったり…強いて言うなら、そういう音楽は、悪い音楽かも。そこは直接音楽とは関係ない領域だけどね。
ーなるほどね。そう意味だとさ、人間性って部分だとカワノはそこのウェイトが歌詞において重いよな。特徴的と言うか…俺のイメージ、「なんでそんなことまで言う?」ってことも躊躇せず言う、みたいな、そういう感じ。「暗い」とかってよく言われてると思うけど、俺の印象はそうじゃなくってさ。
カワノ いや、暗いよ笑
ー笑 そうじゃなくってさ、その暗さは嘘や演出ってところから最も対極っていうか。だからこそみんなが顔をしかめたり引いちゃうようなことも言うから、暗く受け止められちゃうってだけで…うまくまとまんないけどね。どっちかと言えば「グロイ」かな笑
カワノ あー、でもね、虚飾のないものは実際目指してはいるんだけど、それは一種自分に厳しく課してる、すごく作為的なフェイクの側面も正直あるんだよね。生まれつき、ありのまんまの俺、ってわけじゃなくて、勤めて取り繕ってる感じ。局面局面で「本質はどうだ?」って、自問自答した末に俺の思うピュアな幻想の姿を見出して提示するって感じかも。だから、純粋に正直になった結果発露するもの、じゃなくて、純粋な人間とか正直者になろう、近づこうとして発露させてる、こうであるべきだってものを打ち出すっていうのを本質におきたい。…ドラクエのさ、いるじゃん、人間になろうとしてるスライム、あれみたいな笑 で、そうやってるもんだから客観的に見ても頑固な部分が出てくるし、だからこそ一種、過剰にとらえられたり、誤解を招くのも仕方ない表現もしてるけど、実はそれすらも楽しんでるところもあるかも。聴いた人が「うわっ」ってなってるところとかさ。そういうわけで、嘘や演出から対極っていうのはすごく的を射てもいるようで実は、…俺自身が自分のことを「本当にそうか?」って思っちゃうときもある。だって自分は演出していると言われたら反論できんわけよ。俺の中の、バイアスもかかった上でのきれいごとや神様を書いてるわけだし、歌詞って。それを客観的に見たら、多分誤ってるところも出てくるわけですし。
ーなるほどね。
カワノ でもね、元々、「歌詞」を書くのがすごく苦手でさ…。結成当初からCRYAMYの曲は全部歌詞先行なんだけど、それでも苦手だし…そうだね…、そもそも詩的なこととか、レトリックを凝らせたものとか、情景描写と曖昧な表現でぼかすみたいな、作詞のテクニック…まぁ俺はもともと音楽はアンチテクニック派なんだけど…まぁ、そういうのができないし、俺の感性として好きか、って言われたらそうでもなくてさ。なんか、あまりに作品仕立てなものって感動できなくて。だから、俺が作るものは、意味不明日本語になっちゃってもいいし、歌詞っぽくなくなっていってもいいと思ってる。むしろ一般的に重んじられる方法論はどんどん排除したいと思ってるところはあるかも。
ーなるほどな。「エコバッグを肩に下げていたお腹の大きな女の人」(やってらんねー/「CRYAMY-red album-」収録)…。
カワノ あの歌詞好きだねあんたも笑 まぁ…いわゆる多感な時期、…あまり生活もうまくいってなかったしさ。そういう時期に刺さってきた言葉ってとてつもなく直接的な言葉だったの。…音楽って領域に限定しなくていいなら、本でもいいし、ネットに転がってるエッセイみたいな感じのテキストサイトの文章でもいいし。むしろ、音楽の詞よりも、もうちょっと作家との距離が近いそういうものを好んでいたかな。むしろそっちの方が刺さってたかも。だからなのかもね。
ーうんうん。それを踏まえてなんだけどね、さっきの話で日本の音楽の方が参考にしている、って言ってたけど、俺個人的にはカワノは良くも悪くも歌詞は日本人っぽくないと思うのよ。さっき言ってた作詞のテクニックを廃してるのもそうだけど、物言いが全部直接的だし、断言しちゃう歌詞が多いというか。なんとなく洋楽っぽいなぁとおもう、そこは。洋楽って、韻を踏むとかそういう技巧はあるにせよ、曲にもよるけど、和訳したら案外素直でストレートなことが多いしね。
カワノ そうか。でも、確かに言われてみたら、ってレベルだけど、俺、結構英語の歌詞を和訳してるのを読むのが好きでさ。元々親父の影響もあって、JPOPのCDよりも海外のロックやフォークのCDやレコードに触れることが多かったし、その延長戦で、あの…歌詞カードに乗ってる対訳とか、すごい読んでたの。確かに海の向こうの人たちは、歌詞の意味や内容としては、かなり物言いがシンプルだよね。ビートルズ…俺、音楽で最初にいいなって熱心に聴いてたのがビートルズなんだけど、ポールの歌詞とか特にストレートだよね。ラブを歌ってる、ラブ。
ービートルズかぁ。ラブソング…っていうと語弊はあるけど、カワノの芯を喰った歌詞って、人間の愛情とかを歌ってたり、人間が存在するということを描いてたりすると俺は思うんだけど、そういう、陳腐に言うなら「愛」みたいな概念を臆することなく歌ってるもんな、彼ら。
カワノ まぁ暗い曲は超暗いけどね笑 うん…でも、意識するともせずとも、どちらとも言い難いけど、ビートルズの影響って大きいかも。俺さ…「the long and winding load」って曲が大好きなんだよ。当時持ってたベスト盤の歌詞の対訳なんか擦り切れるぐらい読んでさ。安い言葉で言えば本当にあの曲に支えられてきた12歳から15歳だったし。うん…自分の曲がラブソング…ってつもりは俺はないし、彼らももしかしたらそうなのかもしれないけど…深いところにはあるのかもね、そういうものの影響が。
ーそっか。
カワノ でも、ここまでしゃべっといてなんだけど、俺の思考や影響なんてバンドにとってのあくまで一要素でしかないんだと思ってる。ほか三人の個性とかバックボーン、人間性も出てるだろうし、特にバンド音楽でメンバーが三人とか四人しかいないグループは人間力みたいなものの比重がものすごく高いと思ってるから。しいて言うならそういうものの結晶がバンドだから、俺たちの音楽、って乱暴にくくったうえで、何もかも一概には言えないだろうしね。
ーそっか。こういう、創作論みたいな話ってメンバーのみんなにもするわけ?「俺はこう思ってるんだ!」みたいな。
カワノ 酔っぱらってきて雑談モードになったらする時はあるけど、三人ともきょとんとしてるよ笑 リズム隊二人は黙って酒飲んでる笑 レイはたまに自分なりに思ったこと言うときもあるけど…ってぐらいかな。でも、そういうの一切共有しないね、俺は。
ーそこ、なんか面白いよなぁ。俺は直接他の三人にあったことないけど、お前よく冗談っぽく「仲良くない」とか普通に言うじゃん。みんなで一致団結!とか、そうじゃなくても仲いいからやってるもんだってのが一般的なバンドに対するイメージなんだけど。特にお前らみたいなシリアスでストイックなバンド。バンドの意志がぶれる、とかは思わないわけ?
カワノ うーん、そもそも、だってさ、俺ら友達じゃねぇもん笑 出発点から「とりあえず楽器弾きたい四人の仕方のない集まり」だし、それが俺というみんなの嫌われ者のストレスに三人が耐えながらギリギリのバランスで続いて、ギリギリ一緒に演奏できる曲があるっていう、極端に言えばただそれだけのつながりだし。目指してるところとか、ないし。こうやって動いてるけど、一方でさ、四人ともそうだと思うけど、人生を預けあってるって感じもまったくないんだよね。究極にフラットな、とりあえず楽器弾きたい奴の集合なんだよ。…そもそも、俺みんなに言ってるのがさ、俺の考えや俺の思い、…かっこよく言うと音楽を通じて表現したいことを、これから永久に理解しなくていいし、そのためにバンドやる必要はない、ってことなんだよね。
ーそれもすごい話だけどね。バンドやってるのに。しかもお前の音楽なんか半分以上お前の意志とか内面が大きな存在じゃない。
カワノ とらえようは人それぞれだからそこはどうでもいいけど、あくまでそれは俺個人の戦いだから。ほか三人にはステージ上でもレコーディングでもそれぞれの戦いがあると思うし、そもそも俺たちは活動家とか思想家じゃねぇし笑 それにさ、そういう根源的なところまで俺が統制し始めたらそんなもんバンドでも何でもねぇよって思っちゃう。親分と子分になっちゃう。逆もしかりで、俺も彼らのすべてにチューニングを合わせようとか思ってないわけですから、お互い様ですよね。いちいち確認しないけど、彼らが好きなものや人、思ってる気持ちを、俺が素晴らしいと思わないこともあると思うし、何なら否定する瞬間もあるし。…まずそもそも、俺は人間を一つにしようとかって思ってバンドやってないわけよ。お客さんに対してももちろんそう。音楽って肯定のエネルギーの強いものが多いけど、少なくとも俺の作るものはすべての物事に対して肯定だけじゃなく否定もある。そう思ってるなら、メンバーにもそうであるべきだし、自分もそうされることを受け入れるべきだしね。まぁ、最終的にあの人たちは…演奏する喜びとか、それ以外もいろいろあるんだろうけど…まぁ、そういうのに純粋に身をやつしててくれたらいいんじゃないかな、って、俺はもうそんだけ。それができてるうちは一緒にやれるだろうと思うし。
ー超ドライだけど、逆にそれがお前らの独特な空気になってるのかもなって今思った。…でも、俺はほか三人はお前のこと大事に思ってるんじゃないかな?って思う瞬間、あるけどね。
カワノ それは確認とってないから知らん笑 俺は目に見えないものは信じないから。…言い過ぎ?言い過ぎました。
ー暴論笑
内側に閉じ籠る意味あるの?って思っちゃう
ーしばし音楽の話したけど、ちょっと嫌な質問していい?
カワノ うわ!復讐だ!まぁでも、どうぞ。
ー自主レーベルで今、こうやって新しく人を集めて、いろんな動きをやろうとしてるじゃん。あれはどういうきっかけではじめようと思ったの?
カワノ うん、それはね、俺ら今、全部自分達で回してるじゃん。CD出して、ツアー回って、っての繰り返し。さらにいえば何者にも縛られないで、自分達のコントロールのもとで全てが回せてる感じ。
ーマジでシンプルなバンドの姿だし、全部自分たちで回してる、と。
カワノ うん。全部自力。俺、去年の頭にようやくバイトやめたんだけど、その生活費も、給料が大きな会社から出るんじゃなくて、バンドの収入が直接入ってくる感じ。まぁ俺らはそもそもそういう…レーベルとか事務所とかレコード会社からのオファーが、残念ながらなくてさ。だからレーベルも最後は自分たちで作ったし、マネジメントみたいなものも全部自分たち。提携してるところもないしね。でも、現実的な話すると、そういうとこと仕事する方が自分らの負担も減るし、チャンスもミラクルも舞い込んでくるから有利だとは思うから、素直に羨ましいなぁって思うこともすごくあるけどね。最近だと俺らだけだと限界とかキャパオーバー感じるところもあるし、悩みがないことはないけど、まぁしょうがないんだよね。一方で、誰かの手が加わることで生じてくる弊害ももちろんあるのもわかってるし、それが嫌だな、っていうのもありつつ。だから、あえて選んでこの道を進んでる、っていう感じが消去法で一番近いかも、だね。
ー外から見てても、例えばこういうインタビュー企画とかを自分たちで考えて実行したりとか、大変なのは伝わってくるよ。だって本来やらなくてもいいことまでメンバーとかスタッフが負担を負ってるってことだもんな。
カワノ まぁね。CDや物販の制作費や箱代、対バンがいるならそのギャラとか、全部俺らの財布で回してるからその計算もしなくちゃいけないし、ライブハウスを押さえたりも自分たち。全国各地にライブをしに行くけど、生々しい話、それもバンドの活動として、って以外だと、メンバーとスタッフの生活のためにライブを打ってる側面もある。俺個人で言えばプラスアルファでバンドの活動の方向性を年間計画で考えてきたり、音源制作では方針をきっちり立ててエンジニアさんとは毎日やり取りしたり。メンバーはメンバーで単純に練習も入ってもらわないといけないし、スタッフは俺らの負担をできるだけ減らすために運転とかガンガンやるし…。でもみんな、それが仕事だから。もう少し楽になっていけるところも増やせたらいいとは思ってるけど。
ースタッフの人たちもいつつ、とはいえやってることは本当に自分たちで決めて、やって、って感じなんだな。
カワノ うん。でも、今の時代、本当にやりたいことをやる、自分で選んで進む、って決めるんだったら、…変な話だけど、音楽だけに集中するっていうのは贅沢だと俺は思ってるんだよね。客観的に見て潤ってる業種、業界でもないなぁって、俺らは末端だけどそう感じるし。そもそも俺は、最近思うことだけど、自由とビジネスは両立させるのが難しいと思ってるんだよね。
ー音楽に集中することが贅沢にあたるのか…。夢ないなぁって思っちゃうけどな。
カワノ うん、絶対間違ってないと思う。そこを簡単に脱出しようとするなら、例えばどこかに寄りかかってしまうとか、やりようはあるんだろうけど、そのためにある程度でき上がってる仕組みやレールに乗ろうと思ったら、やりたくないことをやらなくちゃいけなかったり、ふるまいを演じてみたり、どっかで頭下げなくちゃいけなかったりとか、そういうのを強いられてしまうんだよね。気に入らない人とも仲良くしなくちゃいけないし。そういうのが楽しめる人もいるのもわかってるけど、なかなか俺たちはそうじゃないっていうか…。でも、そういうストレスからは今、まったく無縁だし、格好つけるなら「自由の代償」的な笑 年月を経て多少小賢しくなってきた今だから思うけど、いまさら億万長者を目指してるわけでもないから。でも…これもまぁ、とらえようによっちゃさっきの話じゃないけど、自由ゆえの弊害なのかもしれないけどさ。…理想を言えばこのままブレイクスルーできれば超かっこいいし、それができないとも思ってないから、それ目指して頑張ってるけどね。それで成し遂げたり、逆にダメだったり、いつかバンドが終わるだけの話さ。別に長く続けようとか、生活の延長でバンドやりたい、って、しがみついてでも続けたいわけでもないし。まぁそうなったら、社会性のないメンバー…少なくとも俺とレイは餓死だから、頑張るけど笑
ーなるほどね。
カワノ でもね、単純に、バンドを動かし始めて三、四年って考えたら、うまくいってると思うよ。新しい曲を出せたり、金回りも良くなってきたし、そりゃ楽しいことばかりじゃないけど、うん…そう思うようにしてる。だから、本当はこういう、新しいなにかなんかやんなくてもいいのかもだけど。で、本題なんだけどさ…突然だけど、俺、この間和菓子買ったんだよね。取り寄せで。
ー話飛ぶね!笑 で?
カワノ 老舗の和菓子のお店なんだけど、商品と一緒に手紙はいっててさ。創業何十年の店が、だよ?すごいなって。もちろん、味もうまいし。…なんか、お菓子とかさ、コンビニですんじゃうもんだと思うんだけど、こうしてわざわざ注文して食ってさ、しかも手紙も丁寧に手書きで入ってて、心も満たされて。これ、いいなぁって思ったの。しかもこれ、ハードコアのバンドとおなじじゃん、って笑
ーまた話飛んだよ笑
カワノ ふふ笑 fugaziのDVD見ててさ、物販の通販とか、会場の手配とか、レコードの宣伝とか、彼らも何もかも自分達でやって、…そりゃCDの流通とかライブの裏方とか力は借りてるとはいえ、0から1の領域ではそれを自力にこだわってリスナーに届ける、ってスタンスじゃん。それを感じた。言ったら、サブスクがコンビニスイーツの羅列だとしたら、俺たちは老舗和菓子…お高く止まってるって意味じゃなく、サブスクやらんCDだけの限定的なもの、って意味でね。で、手紙はこういう、レーベルの企画…フィジカルのみで売るって選択も含めて、って捉え方ですよね。
ーなんか極論過ぎるぞ!でもまぁ、いいたいことはわかる。
カワノ まぁ、CD作って売るっていうのだけでもレーベルとしては機能してるって、それはそうなんだけど、そういう出来事があって、今やってることだけじゃなくてそこからもう一歩やること増やして面白くして、踏み込みたかった。し、自主レーベルでやってるんだから、今自分たちでコントロールできていないものにも手を伸ばして、それを自分たちで回して、最終的には何もかも自分で担いたかったんだよね。
ーそっか。でも例えば、ラジオならなにか番組に出たり、音楽雑誌にインタビューのせてもらったり、他の人の力を借りるとか、そういう選択肢はなかったわけ?
カワノ ラジオも雑誌のインタビューも、これマジで俺ら、そもそもオファーないからさ笑 営業かけてないってのももちろんだけど、ここまでやってきてそうってことは、そもそも誰も俺らが好きな人いないんじゃないかな、あの辺の人たち。「音楽と人」くらいかも、昔っから応援してくれてすげぇ世話んなってるけど。でも、じゃあ今から他のとこにも頭下げてやってください、ってのも違うわけよ。まず、そこには安くないお金も発生するし。機会があるなし以前に、こちらから働きかけるのは不健全と言うか。俺たちに興味のない人たちに向かって頭下げて金払って、…あっちも商売だからもちろんそういうのもありだとは思うけど、紋切り型の台本ありきの意味のないおしゃべりして…って、そういうの。あの業界の皆さんがやってること、広告なんだよね。本筋からは大いにずれちゃって、それで別のビジネスになってるよ。...なんかね、今のところ俺は仕事っぽいスタンスで魂的な話しはしたくないの。逆にこれまで応援してくれた人たち、今やってくれてるところは善意と俺らへの興味だけでやってくれてるから、いつかちゃんと恩返ししたいけどね。
ーうーん…きれいごとっぽく聴こえちゃうけどね。まぁここまでそれで通してる、ってのはお前の美徳か。
カワノ そう思ってる。…あと、ちょっと嫌だなぁって思ったのがさ、ある媒体がインタビューのオファーしてきたの。でも、CDの音源をその時点でデータで要求されてさ。曲も聴いてないだろうしたぶんライブも見たことないのバレバレで。で、ざっくりいうと、「リリースおめでとうございます!さて、○○万円で何ページでインタビューが…」って内容だったんだよね。俺、ふざけんなよ、って思っちゃって。あまりにビジネス臭くて。これで不快にならないと思ってるのが終わってるなって思ったわけ。だから、そういう不信感もある、…メディア、ってまとめると乱暴だけど、その辺の仕組み。で、そういうのあるから一切拒絶!じゃなくて、じゃあそこも自分らでやっちまおう、作っちまおう、って。「いいよ、自分でやるから」って。
ーまぁ俺はこのもろもろの全容聞いて、「あーカワノ、メディアに喧嘩売ってんのかな」って思ったんだけどさ、当たってるね、半分は。
カワノ 伝わってると思うけど、一番は自分達の手でなにかやらかしたい、って気持ちだし。自分の力で何でもやるぞ!っていうこだわりとか思いもあるけどね。でも…言い方変えたら、他人には期待してないし、できない、ってことかもね。今、全部自分達で手段を用意できちゃうじゃん、って。そもそも今は喧嘩にもならないと思うけどね、俺たちが零細すぎて笑
ー笑 で、こっからが本題なんだけどさ、それを踏まえて俺が感じたことね。
カワノ うん。
ーお前らが今からやろうとしてることの意義やこだわりは伝わったけど、…これは消費者の目線からの話だけど。今お前らを好きで聴いてる人たちはこういう企画は嬉しいと思うけど、じゃあお前らのこと知らない人たちには届くか?っていうとさ、やってることが内側に籠りすぎ、っていうか、悪く言うと自己満足の範疇だと思うんだよね、俺は。現実的に、俺だったら知らないバンドの、それも自分たちでやってるようなインタビューなんか、読まないと思うしさ。この、今やってる対談も記事にするってなっても、ファンジンっぽくなっちゃってるというか。
カワノ うん。
=そもそも、お前は宣伝とか販促みたいなこともスゴイいやがるし、そういうビジネスっぽい話されるの嫌だろうし、もっといえば俺なんかただの部外者だし、腹は立つと思うけど。けど、俺が思うのは、今回始めることは、お前らとお前のリスナーが喜ぶしそれを楽しんでお前らがやることは素晴らしいと思うけど、人前に立つ人間、しかも音楽で食ってる人間としては周りに対する意識薄くね?ってこと。拗ねてるように見えるんだよ。自主でやる、ってんならなおさら自分達の音楽広めるために人よりもより努力するべきだと思うけど、お前はそれをしてないように見える。今までの話とか聞いたうえで言ってるけどね。だからお前の気持ちとか考えもわかるし、しがらみや腹立つこともあるだろうけど、使える手段使わないとか消極的だし、そこの努力怠るのはどうなの?って。
カワノ あー…その話はいろんな人から言われたよ。外に広がっていかない、ってことだよね。いい機会だから言っとくけど…まず一個いいたいのは、俺、この企画自体を商売の道具としてはとらえてないってこと。これで金稼ごうとか微塵も思ってないし。さらにさ…もっといえば、これをきっかけに新しい人に見つけてほしい、とかも、おそらくない。そういうのは純粋に音楽の良しあしとか、聴いた人間の状況や心情にマッチすることとか、そういう、音楽そのものが運んでくるべきだし。最初の話に戻るけど、これは俺にとって和菓子についてた手紙とか、例えば物販のTシャツとかと一緒でさ、前提に音楽ありきでそこに付随するものなんだよ。それを届けるのも俺たちの新しい仕事だよな、って考えで、だから…。
ーいや、わかるよ。わかるんだけど、本来こういう活動って言うのは、お前らのことを知らない誰かにお前らの人間性を理解してもらったり、…うーん…そうね、…音楽の楽しみ方を多用にしたり、そういう役割もあると思うの。「も」、ね。それに俺も好きなバンドのインタビュー読んで楽しんできた人間だし。簡単に言うと間口をはっきりと広げる役割なんだよ。そりゃ今いるお客さんにもその役割は果たせるんだろうけど、外側にいる人たちにはその役割を果たせないんじゃないか?って。必要以上に内側に閉じ籠る意味あるの?って思っちゃう。
カワノ 必要以上に、っていうのが俺は引っかかるけど。…もっと外面よくして人目につく動きしろ、ってこと?さっき俺が話した話と全然食い違うんですけど。聞いてた?
ーそこまでは言ってねぇよ。ただ、さっきの話もあるけど、もう少し柔軟に考えて、これをやるにしても、同時にもっと外を意識した活動もしたらいいのに、ってこと。それはお前のストレスにもなるかもしれないし、お前の美徳を無視することにもなるけど、俺はそれが仕事じゃない?って。お前さぁ、何もかも自分達でやろうとしてるけど、そこだけだと…。
カワノ そこはたぶん考え方の違いだわ。…俺さ、昨日野外フェスに出たんだけど…それこそ、それは外に向けて、間口を開いて、って意味だとさ、いい機会だったかもしれないけど…具体的には言わないけど、ちょっとやっぱ、もやっとする感じもなくはなかった。見に来てくれた人たちには心からありがたいと思うし、そもそもフェスなんて良いご褒美でいい機会でもあった。それにメンバーやもともと俺らを応援してくれてるお客さんはこの機会を喜んでたと思うけど、それでも、人がたくさん集まっているのを見ても、お客さんが楽しそうにニコニコしてるのを見ても、そこにある違和感が結局演奏終わるまでぬぐえなくて、テンションもあがりきらないまま終わって…って、そういう日だった。
ーうん。
カワノ で、案の定、終わったあとに伝わってくる感想も、…あの中には届いた人間も、きっといたにはいただろうけど、中にはまったく的はずれだったり、俺からしたら理解できないことだったりもあったし、ライブ後に紋切り型の文言が並んだ中身のないライブレポートが出たりしたし…言い方悪いし、もしかしたら傷つく人いるかもだからマジごめんだけどさ、あの日の演奏や時間を割いて残した言葉に対してまず「アツいね」とか、「思想強いね」とか「尖ってるね」って感想が残るんだったら、…すげぇ言葉選んでマイルドにいうと…すごく残念だし、意味なかったな、って思うと言うか。中身というか、本質が一切伝わらなかったんだろうし、そういう人たちははなから受け取るつもりもなかったんだなって思う。一番は大事な曲をここで使わなきゃよかった、って。事実そういう捉え方をされたのが多数だったし。…スピってると思われてもいいけど、そういうのって感じたとおりに当たるし、わかるんだよ、俺。
ーうーん、絶対そこまでいうことないと思うし、何がそこまでお前を怒らせたのかが…。
カワノ いや、怒りじゃない。だってさ、まぁそれは誰も悪くないと思ってるし…さっきから言葉選びまくってすげぇ漠然とした話ばっかしちゃってるし、超ムズいんだけどさ、良い悪いの次元の話ではなく…傲慢かもしれないけど、俺がほしいのは誰かが自分で俺たちの音楽を「選んだ」っていう事実なんだな、って思った。その日はね、ただそこに立たされただけだったんだよ。カタログに載っただけ、それを眺めてもらっただけって感じ。で、そもそも、そこに至る前にその瞬間瞬間ですでに選ばれてなくちゃ、そもそもなにも受け取られないんだよ、多分。そして、俺は…俺らはそういう場や人じゃない、選ばれた人や場所に対して責任を果たしたいわけ、果たすべきって。で、あんたの言うことに対して反論するなら、最初からそこで選ばれるために動くのはその逆じゃんって思う。
ーいや、ムズいって絶対。普通に考えたらさ、…俺も現地を知らないけど、ライブのレポートは読んだよ、だけど、少なくとも文字で読むだけでも、あんなライブやったら普通の人はまず「尖ってるね」って言うのなんか想像つくじゃんって俺はお前に思うね。で、そういう風でいたら、なにかを受け取るも糞もないと思うよ。だってお前がそもそも歩み寄ってないもん。全然。
カワノ あー…俺はただ与えられた時間でできるベストを尽くすとしたら、っていう思考でやったつもりだったからな、ってさ。あの場でした話も含めて。それが意味をなさなかったって話じゃないかな。まぁそれも、全部自分の力のなさって言われたらそれまでだけど。
ーいや、お前がこれまで表現の場として選んでたフィールドって、お前の言葉を借りるならお前らを選んだ人間がお前からなにかを受け取るのを覚悟して集まってるところだと思うんだよ。チケットを買って、イマドキ珍しくCD買ってさ。そういう人たちの集まり。そこに対しては、少なくとも俺は見た数は少ないけど、お前はちゃんと成し遂げてんの、なにかを。絶対。でもだから…その日に関して言えば多分…お前がその、自分に苛立ってるのはさ、その日は道端を歩いてる見知らぬ人間に急に歌を聴かせて顔をしかめられたのを見て、「は?」…みたいになってるのとおんなじなんじゃないかな、って。だから力不足ってより、単純にお前の親切心が極度にないだけ笑 挨拶もなしに詰め寄った、みたいなさ。
カワノ うん…まぁいいや、そう受け取ったり解釈するならいいけどさ、その物言いは納得するところとそうじゃないところ、ある。納得しないとしたら…いや、全部に納得しちゃったら、俺はそれ、誠心誠意向き合ったことにはならないってことになるから。逆に…目の前の、例えば知らない人間も舐めてることになる。「親切さ」とか「歩み寄る」って、とらえようによっちゃ次元下げてるのと同じだから、俺の尺度だと。ライブを通して何を伝えるか、ってことを抜きにしてただ表面上盛り上がる曲をやるとか、みんなが知ってる曲をやるっていうのは…エンタメとしてはいいけど…それは、ダメでしょ、俺らは。その日に意味がない。だし、CRYAMYはマジでやった結果しか残しちゃだめだと思うし…ちゃぶ台ひっくり返すようで悪いけど、そんな風になるつもりも今後一切ないし、その結果、俺は選ばれなくてもいいとすら思う。そりゃ…今までにも何度もあったけど、結構失望の気持ちがあるけど、寝て覚めて研鑽して、を繰り返して、またいつかそこに諦めずに投げ掛けるつもりじゃいるよ、これまでどおりにね。たとえ挨拶もなしに詰め寄ろうが、それがまっとうに意味を持つ日もあることや、それでうなづいてくれる人間もいるのを信じてるし。
ーうん。でもね、まさにお前が言ったその言葉が…俺がはじめてお前のライブ見た日に、なんてお前が言ったか、自分じゃ覚えてないかもしれないけど、「違う対岸や地平に向かって」…なんだっけ、でも、「諦めない」っつってたんだよ。「HAVEN」の前に。で、この日のレポートも、文字だけだけどさ、お前の言ってることも一部は文字に起こしてくれてるし、ちゃんとその話からぶれてないじゃん。で、お前の言う通り1人くらいは、その場にいた奴で、そこわかってるやついると思うよ。お前がさっき言ったように誰のことも舐めないでぶつかった結果としてね。それは絶対に誰かに伝わるし、伝わるべきだし。俺も矛盾しちゃってるかもだけど、それは素直に素晴らしいと思う。
カワノ ああ…、…まぁ、さ、でも、…これ大事なことだけど、そもそも人がなにかを選ぶって、すごいことだから。まさに、そういう話で言うと。…これはもう、ずっと思ってるし、そこには俺たち、責任がある。なのに、そういう大事なことに対して媚びて「選ばれよう」とする努力ってものに、…少なくとも今は興味がないし、力を使いたくないし、…つかれる。そもそも、「みんなの歌」なんかこの世にはないんだからさ。だったら、選ばれた、選んだ人間の「私たちの歌」として機能するようにやることが俺の大事なものなんだよ。
ーうん。
カワノ でも、今こういう風に言われてさ、ふと思ったんだけど、今回始めるラジオもだし、この対談もだし、せっかくタダでやるんだから、もしかしたらいつかはあんたの言う「親切さ」に繋がるのかもな、って。ここを通して俺が話したことが、いつかかつて言ったことを時間差で理解してもらえたり、逆に、これから選ぶ上での手助けになったり。俺の、ライブ会場での、本当に言いたいことの…そこにたどり着くまでの導線とか翻訳とかに…。きっと多分…後付けで反論することになるかもだけど、それはきっと自分の力でじゃないとできないし、自分ですることに意味がある。それを人に任せたり、頼んでやってもらったりは絶対違うわ、うん。
ーお前の言うことは理解したよ。…なんか、いろいろ言って悪かったな。あと、大事な時に俺呼んでくれてありがとよ笑
カワノ いや、俺も言いすぎました。でも最後にそんな感じで笑って済ませる優しさね笑
ー嫌なこと言ってごめんな。
カワノ まぁ俺も図星つかれてうろたえたけどね笑 すごいなんか…今の一連がさ、人になにかを強いてしまうような会話だったかもだけど、基本的には音楽だからね。…またすごいちゃぶ台返すけどさ笑 別に、音楽にそういうややこしいものは必要ないこともまた絶対に正しいし。ごちゃごちゃ言わずに楽しめたら幸せ…って素敵だし。音やメロディだけ聴いて「素敵やん…」みたいなさ笑
ーだね。
カワノ ただ、俺は…俺個人は意味や理屈…魂とか、愛とかさ、そういうややこしいことを表現する音楽や人たちに心を動かされてきたし、…陳腐な、っていうとあれだけどさ、「WASTAR」も「世界」も、言ってることはきれいごとや理想論みたいな、とらえようによっては鼻で笑われるみたいな糞陳腐な言葉じゃん。「生きる」とか「愛してる」とか。わかってるんだよ、それは俺も。でもそれは、俺はあえてストレートに、虚飾なく言いたかった言葉だったんだよね。だから、それをただの言葉にしたくなかったし、できなかったから、メロディとリズムとビートをつけて、ギターを鳴らして…選んでわざわざ音楽にしたわけだし。そこにはややこしい思いが切っても切り離せないんだよ。理由とか魂とか、こればっかりはさ、そこに存在しちゃったのしょうがないんだよ。だから、これからもそういうの、歌詞にするし、ライブで目の前にいる人間にめっちゃ言うし…うん、でも、頑なに、そう思うな。で、その意味や理由が、こういう企画を通じて、別の角度を通して少しでも翻訳されればいいかな。…精いっぱい親切になるとしたら、これぐらいしかないよ。
人間の営みなんか簡単に途切れないよ
ー…さぁ、ギスッてきたところで笑
カワノ 笑 文字だと伝わんねぇかもなー笑
ー最近どういう曲作ってるの?俺としては、「YOUR SONG」で変わって、レッドアルバムでまた変わって、「#4」でまた変わったって印象。また変わるの?
カワノ あー、これは難しいなぁ。変わるっちゃあ、変わる。でも変わらないといえば変わらない、かな。それこそ、さっき出た野外フェスの日、この夏の最後のライブだったから、この一年の上半期を総括して、そういうことを書いた新曲をやったんだよね。それは、明らかに変わった、って訳ではないけど、倉田さんぐらい敏感に変化を感じる人からしたら変わった、って思うかもっす。わからんけどね。
ーそうなんだ。
カワノ それこそ最初の話じゃないけどさ、自分の心象風景ではない、今俺が対峙してる外の世界に踏み込むための一曲かな、って思ってる。内面と外面のボーダー。「#4」がすごくインナーで限定的なものだ、って、乱暴だけどくくるなら、そこから少しずつ離れていくような感じ。だからアレンジやサウンドよりも、…一番は歌詞かな。そういうのは明らかに変わった、って主観的にも思う。
ー俺は「#3」の時点で変わった!って思ったの。変わった!って言うのは、初期2枚の曲と、って意味もあるけど、それ以上にお前の人間性が。音楽を介さないところでもね笑 なんというか、歌う対象が、他人の姿が見えてきたんだよね。これまではお前の一人ダンス見せられてるだけだったのが、次はだれかと踊ってる、みたいな。
カワノ 例え方キモ。
ーうるせぇな笑 …だから俺が言いたいのは、基本的にお前の変化って、視野の広がりとか他人への許容ができるようになっていくこととか、って感じる。
カワノ そうなっていかざるを得なかった、ってのが今の感覚かも。じゃないと、はじめてのワンマンをやった時や「#3」リリースの時に決めた俺の覚悟とか取り決めを破ることになるから。それを守るためにはより多くのものと格闘しなくちゃいけないんだよね。さっきの話じゃないけど、大きい仕組みや枠組みへ向かっていく必要があるっていうかさ。
ーなるほどな。だから、言い方ムズいけど…自己実現のための作曲、って領域は早々に脱出したと思ってたけど、今の話があるんならさ、まだ先がある、ってことなんだ。
カワノ うーん、でも変わらないって言われると変わってないんだよ。結局は核にあるのはまだ俺の心とか俺だけの風景な訳だから、そこから出ようってボーダーにいる以上、まだ完璧に外側に向かってるわけじゃない。むしろ、捉え方によっては…さっきの他人が見える云々の話じゃないけど、その、他人…っていうか、ある一人だよね、その、ある一人に向けての讃美歌っていうものを俺なりに頑張って突き詰めている、とも言えるかもしれない。
ー俺は個人的にお前のそういう曲大好き。「WASTAR」とか、「俺に歌ってるのか?」ってキモいけど思っちゃうしな笑
カワノ いや、キモくないよ。
ーそこは茶化さないんだ…。
カワノ あなたは真剣だから笑 だから次のリリースは、CRYAMYのこれまでに楔を打ち込む作品にする。これまでの歴史として、一つの大きな出来事になっていってほしいし。「名曲」って言葉、安易に使わないけど、「名曲」だけの一枚。…まぁあと、俺、去年のライブで「CRYAMYは今終わった!次にいく!」みたいなこと言ったけど、あれ、今考えるとバカみたいだな、ってさ笑
ー俺、あれ聞いてて正直頭抱えたし、「ひどい…」って思ったよ笑
カワノ だよね笑 まぁともかくさ、口でなに言おうが、物事、なんの行為もアクションもなく終わるものってないんだよ。「#4」なんかもリアルタイムでそう思って作ったか、って言われると微妙だし。だから、次こそ俺は本当に終わらせるよ、って気持ちで作ってるんだよ。ちゃんと終わらせるための一枚。
ー俺はお客さんたちみてて思うのが、お前らのリスナーはお前らとのこれまでの歴史を踏まえて楽しんでる人たちもいると思うの。それぞれの出会った日から今までの歴史。だからその連なってきた時間にあえて結末をもうけるっていうの、なんかすごいワクワクするよ。しかもそこには終わりの悲しみっていうのがなくて、ぶっ壊れた後の再生の一歩目みたいな、そういうの感じるし。
カワノ それはどうかな笑 いつも終わりは見据えてるバンドだし、まぁバンドなんていつか終わるんだから、そういうのは本当に終わるとき…涙は命が尽きるときにとっておけばいいとも思うしね。それに、歴史と言う観点で捉えるのなら、もちろん終わらせる、って言っても、終わりすら一つの点だから、絶対に続いていくものなんだけどね。それに、人間の営みなんか簡単に途切れないよ。
ーなんかアーティストっぽいな笑 でも、いいこと言った!ほんと楽しみだよ。
カワノ 先のことはマジでどうなるかわからん!まぁ、実はその終わりを見据えた作品以降のデモも作ってるんだけど…「そっちっすか!?」みたいな笑 うん、もう本当ね、人格変わった?みたいな、そんなのばっか作ってる笑 だから、2022年を終えて、これまでの総括を出して以降の俺達のストーリーっていうのは…続いていかない人も多分たくさんいるだろうね。でも、これまでの俺たちの方が好きだった、って人も絶対いるだろうけど、知ったこっちゃないしさ笑 そこで終わる関係もいいと思うし、できるならそれは自然に手を振って別れられたらそれが一番だけど。まぁそういう2022年、かな。でも、それはそれとして、そこから先の未来は俺はまた新しい誰かとたくさんであっていくだろうし、残った誰かとの人生は続いていくって信じてるしね。バンドってそういうもんだから。
別に歌わなくても、わかりやすく盛り上がらなくても、ただそこにいてくれるだけでいいよ
カワノ やっぱいいね。ここまで本心を語れる人いないから、適任だよ。インタビュー、本当はあんまり得意じゃないんだ。
ーそりゃよかったよ。でもはじめてライブをみたのがいきなり渋谷クアトロだったから、「出世したな!」って感じ。不思議だよ、昔みたく話せるの。
カワノ まぁ入場制限ありきだし、俺は全然達成感も成し遂げた感じも、実績として誇る気持ちもないけどね。気持ちとしては下北沢のdaisy barでワンマンをやりきったルーキーのまんま。場末の三下バンドだよ。そのワンマンのあとのリリースツアーも、途中で中断して再開したころには結局制限の下でのライブだったし。この制限下でのSOLDなんて、嘘だから。うめてねぇんだよな、全然。ライブの現場、って意味では時間止まったまんまかな、今もずっと。何も成し遂げていない。マジで。悲しいかな、悔しいかな、だけどさ。
ー謙虚だなと言おうかと思ったけど、お前の場合はプライド高いだけだな笑
カワノ それも良くいってくれてると思うけどね笑 単純にあの日のdaisybarのワンマンの景色が忘れられないだけ。あれが俺にとっての出発点だし、あるべき姿だし、本当のライブって思う。戻ってくるといいな、って。あれがもう一度見てみたいだけ。
ーお客さん合唱!ダイブ!みたいな?
カワノ あー、それね、よく言われるけど、全然NOっす!俺はたしかにそういうのもあの時は楽しんでたけど、こうして制限の中でライブしてて、本質的にほしかったのってそういう、わかりやすいものやリアクションじゃないんだ、って思った。
ーそれはどんな?
カワノ 例えばさっきあげたのって、今やってるライブではもちろんないんだけど、それでも俺は楽しいし満足するわけ。自分でも意外だったけど、そういうのって表面的なものだったんだ、って気づかされたの。そういうのがなくても、例えば表情や目線で感じるものもあるし、単純に漠然とした空気で伝わってくるものもあるし、フロアの人間たちが俺にもたらしてくれるものはもっと深い感覚。でも一方で、正しく戻さなくちゃ、ってところや思いもあるんだよね。
ーふーん。そこを重視しないならなんなの?
カワノ 最近気づいたんだけどね、今も記憶をたどった昔も、俺たちのライブに来るフロアの人間を見ててさ、彼らはだれにこうしろ、ああしろ、って言われることがなくそこにいるんだよね。それが素晴らしいなって。俺は、歌え、とか、手をあげてください、とか、…記憶にないからはっきり断言するけどこれまで一度も言ったことないんだよね。そういうのをやっちゃうのはハッキリ言うとダサいとすら思う…うん、これから気が変わったり、角立つから、そう思う瞬間もある、ぐらいにしとうかな笑 まぁ、みんなに対して俺からなにかを課したことがない。ステージのミュージシャンから課される楽しみがあるって言うのも、それも一つの交流だし、俺もライブにかよう一リスナーとしてはわかるけど、少なくとも俺たちのやることじゃない。俺らのライブ、最近じゃみんな黙って聴いてるし、手なんかガンガン上がらないから「葬式」とか冗談っぽく言われることあるけど笑 でもそれでいいし、むしろ、それだけ自由が許される空間作れてるなら安心っていうか。もちろん盛り上がってる人たちも嬉しいけどね。で、どっちにしても、念はちゃんと伝わってくるんだよ。
ーたしかに、いつもみてて思うけど、お前らのお客さん独特だよ。「葬式」とか言うけど、たくさんワイワイしてる子達もいるし、友達と一緒にきて楽しそうにしてる子達も多いけど、…俺がそういうタイプだから、目がいくのは静かに…なんか、痙攣してるような奴ら笑 あの真剣さは他じゃ中々見れないからさ。
カワノ なんかさ、ずっと思ってることがあって。俺は理想を言えば、ライブでいろんなものが解放されればいいな、って思ってるの。苦痛とか苦しみを忘れて、みんなが思うままに一時を過ごせる、っていうか。でね、その解放される状態って、いろいろあっていいんだよ。わかりやすく沸いてる光景だけが解放じゃない。叫んだり手を上げたり踊ったり、別に盛り上がらなくちゃいけないルールなんかないし、逆にへたくそでも踊りたかったら踊ればいい。何かを受け取って呆然と突っ立っててもいいし、かぶりつくみたいにステージに集中するでもいい。…そういう自由さをもっと突き詰めていくとさ…例えばマスクつけるのもそうだし、人との距離を開けるとか、入場に制限かかるとか、今の対策の中ではそういうものが一番に必要なくなればいいなぁとは思うよ。これは俺の一存では決められない部分もあるけど、俺になんらかの決定権がきたらまずはそこ。入場制限と立ち位置固定の撤廃。まぁ、マスクは命がかかってるからちゃんと慎重にやりたいし、そういう対策がなくなって怖い、って人もいるだろうから難しいし、仮に何もかもオッケーです!って風になったとしても、それはそれってことで人それぞれでこれからも着ける着けないは選んでいけばいいと思うけどね。でも、自由とはいえ、ダイブとか、声だしとか、ぶっちゃけ重んじてないな、今は。なくても満足できちゃうし。もちろんそういうのやりたい人たちもいるだろうから、そこも忘れてないけど、俺の欲望としてはそれを見たい思いはゼロ。まずこの状況になれてる人たちからいきなりそんな状況に戻ってしまったりしたら肉体的に危ないし。事故とかさ、命に直結するじゃん。
ーなるほどね。でも、その制限のない空気の時のライブを俺はみたことないけど、いつかはみてみたいと思うよ。そういう人もきっといると思うし。でも、お前の言ってることもわかる。順序があるとしたら、ってことだよね。我慢しろ、って一元的な意味ではなく。
カワノ そう。そうだし、ライブの醍醐味ってそういうセンセーショナルなところだけじゃないんだよ、絶対。交流が完璧に果たせた末にあるべきは、すべての人たちに価値があるライブであるべき。それは俺、フロアのどんな奴も、どんな奴からもいろんな念を感じるし、ちゃんとわかってるから。だから…少なくとも俺たちのフロアは、別に歌わなくても、わかりやすく盛り上がらなくても、ただそこにいてくれるだけでいいよ、さらに自由だったらもっといいよね、って、そういうこと。第一位はそれ。今は「ただいる」っていうものにも制限があるから、それだけでも完全になくなったら嬉しい。
ーあとちょっと、踏ん張り時かもな。
カワノ うん、そうね。あと、ちょっと凡人っぽくて嫌だけどさ、やっぱ人がたくさんいるとテンション上がるし嬉しいんだよね笑 たくさんの人にみてほしい。これはミュージシャン共通の欲望だけどさ。
ーわかるぞ!俺からしても、大勢の前でお前らがやってるのみたら泣いてしまうんじゃないかって思うぐらいだし笑
カワノ ふふ笑 この間はクアトロだったけど、次はキャパ制限のないワンマンのフルキャパシティの渋谷クアトロでみてほしいな。多分あれの倍以上は人いるはずだから!それに、デイジーワンマン終わったあと、「次は渋谷のクアトロだ!」って思ってて、それまだ達成できてないし。楽しみは先まであるから、大事にとっといてほしいな。あれからもう、3年もかかっちゃってるけど。あんまり人気のないバンドだから笑
ーだな。
カワノ 早く色々緩くなってもいい世の中になってほしいね。これは俺も音楽やってる仲間たちと同じく、思ってるよ。…まぁこれ、やる側の意見で、見に行く俺としては今はチケットもとりやすいしゆったりみれていいんだけどね笑
ー笑
カワノ あっ、今思い出した!それとね!ってか、これが一番大事!チケット代、下げたい!これまでは人数制限の存在がでかくてしょうがなく上げてたところもあるけど、冷静に考えたら一公演3500円とか3800円とか4000円とか、高ぇよ!ただでさえCD買わせてるのに、こんな値段、学生とか貧乏な連中は来れないしさ。前みたいにさ、2500円ぐらいでライブ行けてたように絶対戻したい、いつか。そしたら、ちょっとは負担も減るし、遠征組は浮いた金で足代にしたり、シンプルにみんな、余った金で帰りに一杯ひっかけて帰ればいいしさ。
俺の周りにいる人たち…俺が知らない人でも、そういう他人が俺の噂をしてるのが好きだし
ー結構話したね。どう?今後の展望は描けた?
カワノ うん。これからも回数重ねていくけど、今日みたいなノリで、雑談してそれがこうやって文字に起きるのが一番だね。
ー役割は果たしたぞ!笑 でもこうやってだれかと話すお前の姿ってみられて嬉しい人もいるだろうね。
カワノ それなんだけどさ、前まで俺、日記かいてたじゃん。
ー俺好きだったけど消しちゃったやつね。
カワノ ありがと笑 そこでそういう姿があったっちゃあったんだろうけど、あれは本当に独り言の延長で、ただ俺が一人でぶつくさ言うだけの場でさ。意味はあったと思うけど、…ぶっちゃけ、もう今はなくさないとダメだ、とも思ったんだよね。濁ってきたし、これは今やってるのは完全に失敗だな、って。
ーおもしれー。なんで?
カワノ 今はSNSとかネットの力がすごい、ってみんな言うじゃん?それは俺もいい側面があることもわかってるし、俺たちもこれから活用ガンガンするから否定するわけじゃないけど、そのせいで…っていうか、それ使うことでできることのせいで、かな、その場でやることが俺のやることまで全部パフォーマンスっぽく捉えられることがキモかったんだよね。
ーどういうこと?
カワノ 例えば俺がなにか思いを表明する…っていう場が、ライブなのかネットなのか、の違いでしかないんだけどさ、ネットっつーのは、…って言ったら乱暴か。少なくともあの日記はさ、他人と交流したり誰かの心があったり、っていうさ、例えば、ライブとか、こうした雑談とか、そこではあるものがまったくないのよ。他人の不在、っつーか。そりゃ一人の人間がただ一人の人間の出来事かいてるからそりゃそうなんだけどさ。それはそれで気楽ではあるけど、俺がそこでなにかを表明したり、なにかを綴ったりすること…、そこにあるのは全部俺の裁量でどうとでもできちゃう物じゃん。それって、捉えようによっては俺プロデュースのそういう演出と解釈もできる、と思うの。客観的に見たら、そういうのって操ったり騙したりしやすいとすら思うし。
ー穿った見方ではあるけど、意味わかるよ。
カワノ ねぇ、でしょ。老害みたいな発言するけど笑 最近の人たちってそういうの躊躇ないじゃん。…ごめん、最近の人は言い過ぎた…うーん、世の中にあふれている、俺が得意じゃないくだらない人、にしとこうかな笑 まぁ、そういう人たちにとっては…セルフプロデュースとかって言えば聞こえはいいけど、SNSコメディアンでさ。SNSで虚像を作ることや他人からみた自分のキャラクターや立ち位置をコントロールしたり、リアルの会話の最中ですらそいつが頭の中で決め込んだ筋書き通りに人間を誘導するするのも当たり前になってきて。で、…最近俺、みんなが好き!って言ってる、タレントでもユーチューバーでも、そういうのが透けて見えるやつら、マジで一人も好きじゃないんだけど…でもそういうのを楽しめてる人たちがそれなりにいるのを見てるとさ、それを見てる側も筋書きや演出をわかってても楽しんでる、みたいなこともあるのかなってさ…。残念ながらバンドマンで身の回りにもそういう人たちがたくさんいたし、そもそもそういうのが気持ち悪い、嘘っぽい、ビジネス臭い、…はっきり言うとダサい、って感覚が時間とともに人の心からなくなっちゃっていってるのかなぁ、って。でも、少なくとも俺は不愉快なんだよね、そういうやつら。
ーうん。
カワノ 変な例えだけど、俺は女の子の顔の写真があったとしたら、女優を使って、肌艶をめちゃくちゃレタッチして、駅前の広告にでかでかと引き延ばして張り付けて…ってものは魅力的じゃないんだよね。それよりも、好きな女の子の口周りに産毛がういてたり、ニキビをいくつか潰してた跡があったり…そういうのを見せるのが…ミュージシャンみんなそうしろや!って言いそうになっちゃった笑 ...いやそうじゃなくて、少なくとも俺は、そういうのを見せたいってことかな。隠したいことや見せたくないものももちろんあるけどさ。でもそれも含めて見せる!でも、それをやる上で不本意な受け取られ方をされてしまったり、その真剣さが削がれるのがやだ。俺は嘘がない、…そうではなくても、できるだけ嘘がないように努めてて、ありのままでいる人たちに憧れるし、俺もそうなりたいんだよね。…多分、真の意味でそれができるのって逃げ場のないライブのステージなんだよ。失敗したら全部失望となって跳ね返ってくる厳しい環境。だからそこに向けて死ぬほど準備するし、考えるし、悩むし。…だから、もうそういうのはそこだけでいいし、そこだけに残そう、ってさ。記録や形として残るアーカイブじゃなくて、記憶にしか残らないメモリー…的な?だからって、そこだけが意思表示の場や機会じゃないだろうし、対談はまじめにやんないっす!ふざけます!ってのも違うけどね。まぁ、バランスの話。
ーうん。
カワノ で、こっからが本題ね。そういうことで、これからやることっていうのは、まさにそういう領域とは違う、別の方法で異なる中身でやろう、っていう挑戦でさ、ラジオも対談も雑誌も。別の役割を負ってほしいんだよね。それはさっきの話でも出たけど、ほんの思い付きでもあり、けど後付けっぽいけど確たる意味もあり、ね、いろいろ。…まぁ全然あの日記の変わりにはならないと思うし、とはいえ、これもネットでやるわけだからおんなじじゃん!って、変な話なんだけどさ笑 でも、それでも矛盾してないと言いきれるのは、前みたく一人じゃなくて、こうしてだれかと話をしてそれを見せてるってところ。誰かの検問や追及が入るところ。今日なら、倉田さんのね。だし、それを通して、逆に見せてこなかった部分が見えるかもだし。…長々喋ってごめんね、でもそういうこと。
ーいやいや、ちゃんとふに落ちてるよ。要するにさ、お前の魂的な部分はこれからはライブだけに集約して伝えていくし、一方でこれからそれとは違う新しくやることは前みたく独り言じゃなくてだれかとの交流を通して自分たちを翻訳して伝えたいってことだよね。…でも俺思うのは、ライブ…お前はお前の思いはそこだけに!って思いだろうけど、よく考えたらそこでもお客さんとは交流してるじゃん。だからもしかしたらライブも同じくそうなるんだろうしね、ってことかな。
カワノ うんうん。そうですね。まさに。…俺さ、自分で自分のことを「どうだ!すごいだろ!やってるぞ!」って言ってちやほやされるの、好きじゃないんだよね。いまさらながら、そういう、演出風になっちゃってたところもあの日記にはあった気もするしさ。「カワノ君すごい!」みたいな笑 何気ない「この日のライブはこうだった!」とかもね、受け取りようによっちゃそういうことだなって、気持ち悪いし反省してるし。それよりも、俺の周りにいる人たち…俺が知らない人でも、そういう他人が俺の噂をしてるのが好きだし、誰かが俺らのことをさ、「今日のライブよかった」でもいいし、「あいつはいいやつだよ!」とか、「あいつはやってるよ!」って話を聞くのが好きなんだよね。なんか、そういうのを自分で機会を作ってるのに近いかも。人に俺のこと聞いてみる、みたいな、客観的な視点で。俺が演出した自分、見られたい自分、じゃなくて、誰かが見てる、伝える自分、みたいな。それが伝わればいいな、って。あの日記とは、自己を「伝える」って本質はおなじなんだけど、やり方や中身とか、最終的な作用の違い。
ーいや、でもさ、俺はあれのよさもあったと思うよ。お前が書く文章だったからさ。今のところ、もうそういう場はないってことになっちゃうし、寂しいな。
カワノ まぁそれは…なんとも言えないっすけどね笑 まぁでも、これも言っちゃえば文字だし似たようなもんですよ。あの、インスタで使ってたIDとかも、また別の人が使っちゃったりすると思うしさ。だからもうやんないかな。
ーそっか。
カワノ あと、シンプルだけど、俺が今までつらつら喋ったことを総括してだけど…まぁ、こういう俺の思う価値観とか、持ってる尺度をぶれないように態度で示し続ける、っていう役割も持たせたいかな。あくまで、それを示す、っていう。
ーほう。すげぇ当たり前のこと言うじゃん笑
カワノ ふふ笑 いや、さ、今の時代って対岸にある何かを攻撃したり、否定したり、そういうラディカルな方法をとって起こる悲しい出来事や争いが顕現化してるところがあるじゃない。その気持ちもわかるんだよ。俺も受け入れられなかったり、不快な人間や出来事もあるから。ぶっ飛ばしたい奴なんて、両手の指じゃ足りないよ笑 けど、まぁ、そうじゃなくてさ、一番かっこいいのは、俺は俺の正義を示し続けて、矢面に立ち続けることで、その結果それが対岸の人間に届いたり、今あるくだらない空気や流れを結果的にひっくり返すことになればいいな、って。…でもこれって、当たり前なんだけど、すごく難しいし、超持久戦だから。いかにその日まで自分を折らずに立ってられるか、っていう。…うん、そういう感じ。
ー俺はそこに関しては心配してないよ。「カワノは鋼の意志がある!」みたいなかっこいいことじゃなくて…シンプルにお前、人の心がない冷酷なところあるから笑 たぶん人に何言われようが自分で決めたんなら曲げないんじゃない?冷たい頑固者、という新ジャンル笑
カワノ そこは普通にほめろよ!なんでけなされなきゃいけないんだよ!
ーいや、意志が強い奴は禁煙に何回も失敗しないから笑 お前、雑魚。
可愛げねぇよマジで笑
ー話の中でやっぱお前の中ではライブの比重が重いのがわかったんだけど、お前らのライブって俺が見に行きはじめた段階ですらかなり変化していってるよな。
カワノ あー、かもっすね。
ー例えば、最近はやっぱ、淀みなく曲が繋がっていくアレンジでライブが進行していくじゃん。ライブであんなに絶叫してるのに、休憩もなし、って感じの。シンプルにきつくないの?体力も喉も。
カワノ いや、糞きついよ笑 後半とか露骨にくらくらしてるし、喉もかれてくるし、集中を絶やさない必要もあるしさ。でも、あれが今の理想かも。「音楽と人」の先月のインタビューでも言ってるから、内容かぶっちゃってて申し訳ないけど…DJっぽいのが最終的に行きたいところかな。マジの曲間なし。へんてこな話、…そうだな、例えば、フェードインとアウトで曲が入れ替わっていけば最高笑
ーよくいってるよね。
カワノ もちろん、生演奏だし、テンポもキーも違うから完全にそこにいくのは難しいんだけどね。物理的にどうしても無理が生じることもあるから、その時は厳密には切れ目は絶対にいるんだけどさ。極力、一つの大きな波に観衆を包み込んでいるようなことをしているつもり、演奏のすべてを。だから最近はメンバーと曲作りそっちのけでインプロ(演奏中の即興パート)の練習してる笑 ライブ中のテンションや気分次第で即座に対応できるように、言い方悪いけどハッタリを鍛えてる感じかな。曲が繋がるところはガンガン繋げて、ある一定の地点でフリージャズみたいに自由に演奏して次に繋げていく、っていう。
ー前はステージでよく話をしてたけど、あれも減ってきたんだ。
カワノ うん。まぁそれも、ライブの発言がパフォーマンスみたいになるのが違うかな、っていう。やっぱりそういう風に受け取る人も中にはいるし、嫌だな、って。でも、シンプルにただのお話として発する言葉の重み…歌じゃなくて、心を見せる的な、それも忘れてないから、ノンストップとは言いつつも大事なこと、強く表現したいなにかは演奏を止めて絶対口に出してるし…。
ーうん、ハッキリ言うことは言ってるし、俺思うのが、逆に本当に大事なことなんだな、って伝わってくるよ、それが。わざわざ演奏止めてまで言うことなんだし。やろうと思えば最後まで音で埋められるじゃん。
カワノ そうですね。でも、…これもバランス難しいけど、そもそも演奏の発表会見せたいわけじゃないからさ、俺は。ストイックな演奏を通して感じさせる興奮とか熱狂とかも確かにあるんだろうけど、そこに魂はあるか?っていう。…「音楽だけで何か感じ取ってくれ!」は俺らにとっては甘えなんですよ、多分。そうじゃなくて手は尽くさないといけない、やれること全部。だから難しいっすね…どっちに振り切っても理想ではないという…。…まぁ、漠然としてるけど…俺が重んじてるのはきっとソウルっすよ、ソウル!それを見せたい!見ろ!って。話す言葉に宿るときもあるんだよね。
ーわかりづらっ!笑 でも何となく伝わるよ。
カワノ そこの正解を今探ってる感じ。曲だけを叩きつけるような日が正解と思う日もあれば、言葉を尽くすことが正解になる日もある。もっと淀みなく進めたいと思う日もあれば、もっと混沌とさせたくもなる。言葉一つとってもそう。もたついたりまとまんなかったりしてもいいことだってあるしさ。その場のリアルがそこにあることが重要で。曲そのものには関係のない、ライブならではの細かい部分かもしれないけどね。
ーでも、こんなこと言うとよくないけどさぁ、可愛げねぇよマジで笑 お前、昔は演奏もしゃべりも一生懸命なのにから回ってるところもかわいらしくてよかったのに、今はそれがない…笑 たしかに、今のお前らのライブ、スマートになった反面、取っつきづらいって人もたくさんいるかもね。にこりともせず、顔怖いし、キネマクラブなんて本編最後以外永遠に繋がってたし…。お前前髪切ってから顔がよく見えるようになってなおのこと怖いんだよ。てかまた痩せた?
カワノ うるせぇなぁ笑 あのときは気持ちを表明するために必要な曲ができてなかったんだよ。だから言葉に頼らざるを得んかったの。でも今も変わらないかもね、歌じゃ伝わらないことを言葉で補うって感じかも。そしてそれを埋め合わせるためにそのことについてまた歌を作り…のループなんじゃないかな。大体、から回ってるって言うけど、俺からすると、それを楽しんでんの、なめてんのと一緒だからな。
ーはは…、そっかー。そういう風にやっていくのって楽器陣ももちろんしんどいと思うけど、メンバーとはどういう感じなの?
カワノ まぁそこは頑張ってもらうしかねぇよって感じですね。実際、まだ俺も含めて四人ともまだまだ甘いんだけど、少しずつ頑張ってる方だと思うし。仲は別に、相変わらずよくも悪くもないけど笑 レイとは最近音楽の話が少しするようになったかな。たかしこは弄っても喋らないし。大森くんとは最近よくドラムに関してでスタジオで険悪になるな笑 あーでも、最近みんな偉い!ってすげぇ思うのが、昔じゃ考えられないぐらいすごい社交的になったんですよ。
ーへぇ。
カワノ 俺もまぁこんなんだからさ、話してて楽しい人とは楽しめるし、そういう人たちとはちゃんとスパークもできるけど、そうでもない人たち…って言ったら失礼か。まぁ、みんなに人当たりよくできる方ではないし。態度や目付き悪いとか、要らぬ誤解も多々ありましたから。他のみんなも物静かでおしゃべりが好きなタイプでもないし。だからバンドの印象もよくないしね。しかも俺に関しては最近はひどくって、忙しさにかまけて友達ですらあってないような感じなんだけど。ところが、他三人が最近いろんな人と交流するようになってくれてですね。打ち上げでもよく人としゃべるようになったし、それ以外も人伝に「仲良くなったんですよ~」とか、「メンバーと会いました!」とか聞くようになったし。俺も知らないバンドマンの友達もおるみたいですよ。
ー社交性がない君としては助かってるわけだな笑
カワノ ホントに…。だんだんね、少なくともバンドとしては変な誤解もされなくなってきたし、これは助かってますよ。みんな実は俺のこと、「意外といいやつだよ」とか言ってくれてるのかもですよね、…めっちゃ陰口とか叩いてたらそれはそれで面白いけどね笑 まぁあと、…言い方悪いけど、みんなが社交的でいてくれるおかげで、俺が…まぁ…嫌いっつーか…あんまり関わりたくない人もいるわけだから、そこともうまいこと折り合いつけてやってくれてるし、そこに気を使ったりとか、そういうのもせずに済むようになってきて、面倒くさくなくて助かってるのもあるかも笑
ーそういうことをはっきりかくそうともしないお前が未だに嫌われる一番の元凶だけどね笑 うーん、お前はもっと頑張れよ!ってかお前のせいでメンバーが頑張ってるんじゃねぇの?お前も含めてみんな内向的そうじゃん!
カワノ バカ言うなよ!みんなは全然楽しんでやってるよ!基本的に他の三人は人懐っこい人たちだからね、この場を借りて、それは伝えてとくけどさ。顔怖いだけ、俺たちは。実際はいい人だから。俺もね。
ー雑にまとめたな笑 …ともかく、もちろんまだまだライブは進化するんだろ?
カワノ う〜ん、してぇ~って感じ笑 でもこればっかりはやり続けてきっかけと正解を探るしかないですね。俺はやっぱり、全く音楽のセンスに富むわけではないから、すぐに最適を導き出せるわけではないし。繰り返しの中で確実に小さな何かをつかんでいくしかない。どのライブも日々実験ですよ。メンバーの成長とか、俺のセンスのアップデートとか、そういうものにも日々かかってくるわけだし。...何よりも、今のやり方を続けるなら体力かな笑
ー武士みたいなこと言うね笑 でも喉は大事にしろよ。お前、明らかに体を酷使してるライブをしてるんだからさ。
カワノ 武士ね笑 まぁ、侍っぽいことを言うとしたら、まぁこわれたらそれはそれですよ、ってね!
ーカッコよくねぇよ。あとタバコやめろよ。
セットリストを東京大阪名古屋、一曲除いて被りなしでいくんだよね
ー次回のツアーは時速36kmとのツアーだよね。俺も見に行くよ。
カワノ もし来るんならもうチケット買わなくていいよ、招待席出すから笑
ーいや、もう買った笑
カワノ なんでだよ!しかもアイツもかよ。
ーお前はいつまでも俺たちの後輩ってことだよ!
カワノ うわ~嫌な奴ら。あんたたちのこと誰一人敬ってないから、俺笑
ー笑 次回ツアーの意気込みとかある?
カワノ このツアーも友達との悪ふざけの延長で始まってるから、まずは楽しくやることかな。それだけ。美味しいもの食べてさ。時速のメンバーは本当にいい奴らでね、話してると毒気抜かれちゃうんだよね笑 音楽的にも人間性も向かってる方向違うし、育てられたライブハウスは同じだけど、かといってかっこよくライバルとか同志とかでもなく、でも単純にいい奴らだから友達になった、って感じ。それが続いてるんだ。それに、シンプルに一番長い付き合いの友人だし、一番気心知れてると思ってるから。あっちもそう思ってくれてるんじゃないかな。
ー俺はライブみたことないけど、たしかにみんないい子達にみえるよ。お前みたいなのとよく仲良くしてくれるよな笑
カワノ まぁ、そういう悪い発言はもう無視するけど…。
ー笑
カワノ とにかく僕を下げる...笑 でも、そうはいっても、始まる以上は真剣にやることはいつもと変わらないけどね。お互い、いい所見せようね!っつってさ。ちなみにこのツアー、ファイナルの北海道は除いて、セットリストを東京大阪名古屋、一曲除いて被りなしでいくんだよね。ファイナルはしっかりキメにいくとして、他の三か所は変幻自在と…。
ーおーっ、ヤバそう笑 練習頑張らないとな。
カワノ ねぇ。次のツアーはリリースツアーって制約もないし、自由にやって、かつ中々聴く機会のない曲を見せたいなって。かつてのリリースツアーで葬った曲もあるから、それが聴けて嬉しい人もいるかもしれないしね。俺らの客はともかく、時速のお客さんは多分CD持ってない人たちが殆どだろうから、せめて、とMV見て予習してきたのに!って、良くも悪くも期待裏切りたいな、って。
ーそんなことしてるから可愛げなくなったとか言われるんだよ笑
カワノ まぁ、それは冗談っぽくなっちゃったし、それはそれで皆それなりに聴いてくれると思うけど笑 でもマジでそうする。あと、俺、今年は種を撒く年だ、ってずっと思ってるんだよね。
ーかつてインスタにも書いてたね、よく覚えてるよ。カワノ、お前はまだ道半ばなんだな…って。
カワノ 感想が若者を見守るジジイすぎ。まぁそういう意味でもさ、前回のワンマンツアーは結局リリースツアーだったわけだから、今度のツアーで、こと楽曲を聴くというところにフォーカスするなら…今全ての曲を各地においていくことって大事なのかな、って。必要な人間に届くことを願ってね。種を撒いて。いつか実を結ぶことを願ってさ。
ーきっとお客さんも喜ぶと思うよ。俺も楽しみにしてるよ。
カワノ うん、だから、俺も頑張りますよ。
ー笑顔は大事にね笑 顔怖いんだからさ。
カワノ しつこいな!…逆に髪メチャクチャ切ろうかな…。最近「流行ってる○○ってお笑い芸人みたい」っていわれてすげぇ傷ついたんだよね…。飽きたし、ロン毛も。
「俺のことを歌ってる!」
カワノ ってか結構話しちゃったね!俺ら早口だから時間あっという間だよ…。
ーいや、早口に時間は関係ないと思うけど…。じゃあそろそろまとめようか。
カワノ コナン金田一少年だったらアイキャッチ明けの解決編な。
ーわかりづらっ。
カワノ 笑 いやでも長いことありがとう!長いことっつっても、まぁそんなでもだけど笑
ーなら今から飯いくか笑
カワノ いや、今日は帰るよ笑 ずっと寝てないからそろそろ寝たいし、起きたらちょっとやることもあるしさ笑 でも楽しかったですよ。録られながらだから変な感じになるかと思ったけど…。
ーギスギスしてから馴染んできたね笑
カワノ ふふ笑
ー最後に真面目な話なんだけどさ。いい?
カワノ うん。俺、真面目な話好きだよ。
ー良かった。…お前の音楽、俺は「俺のことを歌ってる!」って思えるほど大好きだよ。
カワノ ふふふ笑 …ごめん笑っちゃった、でもありがとうございます、嬉しいですよ。これ、照れ笑いね。うん。
ー色々言ったけどさ、俺が思うのは、まだまだお前らの曲が必要な人間たくさんいると思うからさ。一個こういう場もそれが届いていくのを助ける一つの場になってほしい、って思ってるよ。これは友達としてもだし、一リスナーとしてもね。
カワノ うん。まぁこんだけ話したんだから笑 苦労は多少は浮かばれるでしょ。
ーそこに携われて俺は幸せだよ。
カワノ ありがとう笑 …ぬるっとおわるのいやだなぁ…うーん…なんつーかね…。
(しばし沈黙)
カワノ …なんかまとめっぽいことひねり出すとすれば、俺ね、「文学は悩める青年の告白の代弁である」っていう、…正確には忘れちゃったけど、そういう言葉があってね。俺、まさに音楽でそれができたらいいな、って。…いや、ちがうな。もっといえばさ、代弁なんて偉そうなもんじゃなくてね。…そいつに変わることはできないんだけど、そのかわりに俺が徹底的に苦しんでるところをありありと見せつけるし、最終的には俺がそいつがかけてほしい言葉、躊躇せずになんでも言うよ、って、そういうの。うん、そういう感じ笑 考えたけど、しまんなかったな笑 あー。これ、まとめで!
ー今やっと可愛げ出たよ笑
(しばし談笑)
カワノ じゃあほんと、ありがとうございました!没になったらごめんね笑
ーこちらこそ。話してて腹減っちゃったから、次は場所サイゼリアとかにしたほうがいいよ笑
カワノ はーい笑