初のフルアルバムとして満を辞してのリリースとなった今作。
このアルバムをもって、CRYAMYの作品は全国流通が決定、事実上のデビュー作となった。
今作はファーストフルアルバムでありながら、旧譜からの再録も多く含み、事実上、この時点のCRYAMYのベストアルバムとなった。
全16曲の大ボリュームで、これまでオーソドックスなギターバンドの枠に囚われず、
少しずつ音楽性の幅を広げていた彼らのアイディアを全て結集したような集大成の一枚となっている。
メンバーが長い時間をかけてこだわり抜いた楽曲とサウンドメイクが今作を彩っており、
オーディエンスからの人気の高い「鼻で笑うぜ」や、フォークロック風の「ギロチン」、
力強いメロディで進行する名曲「完璧な国」など、
CRYAMY入門の一枚として、初期の彼らの魅力を余すことなく伝える一枚となっている。
過去から現在まで、全てを飲み込んだ歌詞世界はアルバムの進行と共に一種ドラマチックなストーリーを描いていき、
「ある一人の男の回想録」でもあり、「敗北の生々しい記録」という側面もある。
いずれにせよ、今作から先のストーリーが、実は本当にCRYAMYが伝えたかったことであったということがオーディエンスに伝わるのは
まだ先の話である。
今作のリリースと共に、東京・大阪でのレコ発イベントを経て、CRYAMYは再び大規模全国ツアーを敢行。
追加公演も入れると全十八箇所のライブを行い、年明けのワンマンライブまで実に一年間をツアーに費やすこととなった。
このリリースでバンドは一度、解散危機に陥るものの、周囲の尽力がありその決断を翻意するが、
以降、彼らのバンドストーリーは大きな痛みを伴いながらの過酷な道のりになってしまうのであった。
ある意味では、バンドの最後の青春を切り取った、そんな一枚。